研究課題/領域番号 |
04301044
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安田 二郎 東北大学, 文学部, 教授 (90036666)
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研究分担者 |
津田 芳郎 北海道大学, 文学部, 助教授 (30091474)
中村 圭爾 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (00047383)
吉川 忠夫 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30026801)
山田 勝芳 東北大学, 教養部, 教授 (20002553)
寺田 隆信 東北大学, 文学部, 教授 (80004034)
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キーワード | 士大夫 / 少数民族 / 歴史叙述 / 歴史認識 / 歴史意識 / 郷論 |
研究概要 |
各々が分担課題に応じて研究を進めた。特に4年12月5・6の両日、研究集会を開催して成果を交換し、問題意識の明確化と共有化を期した。発表者冨谷至は、大英国図書館蔵敦煌漢簡の現物調査に基づいてその廃物利用的な使用状況を確認し、漢代玉門関に関する歴史地理研究に興味深い創見を提示し、写真や釈文によるだけでなく出土史料の現物に即した検討の必要性を強調した。同様に細谷良夫も、現地蒐集の新史料に基づき、中国文化との接触の中で女直等大興安嶺周辺少数民族が文化の独自性に目覚め、満文にて記録するに至った実情を明らかにし、彼ら少数民族の歴史意識の展開を考究するための地歩を固めた。歴史世界と研究者とを媒介する史料をめぐる諸問題は、研究参加者全員に共通する課題であって、基調報告を兼ねて安田も、歴史理解の民族的特性なる比較史的関心を念頭に置きつつ、極度に簡略な記述のために史実の確定も因難な両晋代史の考察には、中国人著述の通俗的演義ものに示される解釈も参考となるのではとの発想に立ち、蔡東藩『両晋演義』と『晋書』との異同関係を考察すると共に、岡崎文夫『魏晋南北朝通史』との対比を試み、両者の間に民族的立場の差異が認められることを指摘した。ついで総合討論会「士大夫にとって歴史とは?」では、六朝士大夫の場合に焦点を定め、彼らの歴史叙述に見出される「曲筆」が、同時代の政治に対する批判や、経世済民を究極目的とする公共的活動の意図に動機していることが少なくなく、対応して、己のが行事が史書に記録されることを自覚していた彼らにあっては、同時代人による評価「郷論」が果したと同様、後世の人々から見られる存在とする自己認識が、生活態度の抑制や経世済民の使命感に基づく実践活動への専念を喚起していた例が確認でき、いわば三次元的郷論なる新視点の設定が、中国士大夫のあり方・歴史との関わり方を解明する上で有効であるとの共通認識を得た。
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