研究課題/領域番号 |
04301048
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 明 広島大学, 文学部, 教授 (90025057)
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研究分担者 |
柳原 邦光 広島大学, 文学部, 助手 (90239814)
東田 雅博 東亜大学, 経営学部, 助教授 (50155496)
槙原 茂 島根大学, 教育学部, 助教授 (00209412)
秋田 茂 大阪外国語大学, 外学語学部, 助教授 (10175789)
井内 太郎 鳥取大学, 教育学部, 助教授 (50193537)
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キーワード | ジェントルマン資本主義 / ミドル・クラスのアイデンティティ / 文化ヘゲモニー / メリトクラシー / 名望家支配 / ローカル・ヘゲモニー / プルトクラシー / 同化 |
研究概要 |
今年度は、各自の研究分野の個別発表をベースにしながら、総論に向けて提示しうるものを引出そうと努めた。4回延べ9人の発表をとおしてまずイギリス史では、「ジェントルマン資本主義」概念を提起したP.J.ケインの考え、すなわち工業による資本主義の興隆を否定し、究極的に金融資本主義に帰着する農・商・工業,金融が機能的に一体となったものが17世紀から1930年代にいたる同国資本主義の構造である。従ってジェントリ層はミドル・クラスの上層を加え込んで閉鎖性・安定性を保持した。との説が示された(秋田)。この問題は必然的にミドル・クラスの一体性(アイデンティティ)の存否いかんとかかわるが、P.アンダスン,W.D.ルビンスタインの中産階級失敗説に対し、ヴィクトリア中期における中産階級独自の「文明化」観。オリエンタリズムの出現を見ることができるとした(東田)。フランス史では、国家レベルのヘゲモニーと、ローカル・ヘゲモニーを媒介する農業金融(小農保護)政策や教育制度をめぐる共和派ブルジョワジーと保守派大地主のせめぎ合いに19世紀中・後期の社会の実相が見られるとした。(槙原)。またロベスピエールの最高存在崇拝と異質なクローツの世界共和国論、理性祭典にみる統合論の独自性が示唆され(柳原)、社会移動・官職上昇を内包したボナパルティズム概念等をめぐって議論が戦わされた(岡本著合評会)。ドイツ史ではプロイセン時代のユンカーと産業ブルジョワジーの社会的融合についての発表を得た(田中)。ユダヤ・ドイツ人のキリスト教徒への同化をめぐるMマルクーゼのゾンバルト批判の過程が混合婚の完遂こそが反セム主義をなくすとの彼の結論と共に紹介された(長田)。今後は、社会移動の方にも重点を移し、ヘゲモニー概念を煮つめるとともに柔軟に適用できるか否かも論議したい。それとともに英仏独相互の間の比較対象にも本格的に進みたい。
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