研究課題/領域番号 |
04301048
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 明 広島大学, 文学部, 教授 (90025057)
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研究分担者 |
長田 浩彰 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40228028)
槙原 茂 島根大学, 教育学部, 助教授 (00209412)
友田 卓爾 広島大学, 総合科学部, 教授 (70034824)
井内 太郎 広島大学, 文学部, 助教授 (50193537)
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キーワード | 宮廷儀礼 / バスタード・フェーダリズム / ボナパルティズム / 文化的ヘゲモニ- / テクノクラト(支配) / カトリック支配 / 共和主義 / ジェントルマン |
研究概要 |
本年度は5回の研究会(広島5回、出雲1回)において12回の個別報告とその検討が行なわれた。また本年度は科研最後の年にあたっていることから、研究成果報告書を作成し、またこの成果を論集として出版することとし、そのための編集委員会の設置、出版社との打ち合わせ(ミネルヴァ書房)、文部省の出版助成金の申請などの活動を行なった。今年度の研究会においては、従来の個別報告に加えて、近代西欧、特にイギリス、フランス、ドイツにおける文化的ヘゲモニ-の比較検討を重点的に行なった。その結果、イギリスのヘゲモニ-は16世紀から少なくとも20世紀初頭の戦間期まで内的な変質はともないながらも、ジェントルマンのヘゲモニ-が貫徹していたことが諸報告において明らかとなった。これに対して、フランスでは革命期に伝統的なカトリック・ヘゲモニ-がくずれ、一方でその間に台頭してきたブルジョワジ-を中核とする共和主義勢力は、いずれもそれにとってかわるヘゲモニ-を確立することができず、フランスに一応の文化的ヘゲモニ-が確立されるのは、第3共和政期の到来を待たねばならなかった。このようにイギリスとフランスとでは文化的ヘゲモニ-の在り方に大きな違いがあることが明らかとなったが、ドイツの場合はさらに複雑な問題を抱えていた。すなわち長い間ドイツは領邦国家体制をとっており、また西部が工業地域・ブルジョワの台頭があったのに対して、東部は以前としてユンカー貴族の封建的な領有関係が残ってきた。こうして、ドイツにおいては、1つの文化的ヘゲモニ-が確立されるにはいくつもの障害があり、おそらく19世紀末のドイツ教養市民層の成長とともにその動きが加速されるものではないかという展望が明らかとなった。これまで本科研研究会では、文化的ヘゲモニ-の概念規定、いわば各国史で共有できる部分をみてきたが、今後はそれに、こうしたヘゲモニ-の現われ方の違いが生まれる背景はどこにあるのか、といった問題も合わせて検討する必要があろう。これが論集作成へ向けての1つの大きな課題として提示された。
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