研究課題
1今年度は、初年度でもあり、各研究分担者が所属研究機関の所持する設備を利用して個別テーマについての研究を進めただけでなく、次のような集団的な討議の機会をもった。すなわち、研究分担者全員の参加を原則とした合宿研究会を2回行ったほか、全体合宿のための基盤的・予備的研究を行うため、研究代表者を含む7名による事例研究部会の合宿を3回行った。2以上の成果として現時点で確認できるのは、主として以下の3点である。(1)第一に、各分担者のテーマを具体化する前提として、事実認定をめぐる問題状況について認識を共通にすることができた。具体的には、裁判所の事実認定が分かれた限界的事例を素材として。事例研究部会による分析・検討を経て、裁判所の事実認定の実際について討議し、その成果をふまえて、その認定手続、認定方法、認定基準、認定対象、認定姿勢等について、これまでの理論的検討の到達点と実務の実情との関係を確認するとともに、今後理論的に検討すべき課題を明らかにした。(2)第二に、各論的課題に関わる全般的前提作業として、わが国においても援用されてきた証明基準に関わる概念である「合理的な疑い」について、英米でどのような議論が展開されているか検討し、わが国における同概念の意義と問題点とを検討した。(3)第三に、さらに各論的課題として、刑事手続での利用が最近本格化しつつあるDNA鑑定について、その科学的鑑定としての到達点と刑事手続における利用可能性及びその問題点について総合的に検討した。