研究概要 |
平成4年度においては、研究代表者・研究分担者それぞれの役割分担に応じて、戦前・戦時期の「日本帝国経済圏」を構成していた国・地域の経済状態の解明に取り組み,併せてこれまでの研究史上の問題点について検討するとともに資料の収集・整理にも努力してきた。この過程で明確となった問題点とそれに対応する研究の進展状況は次のとおりである。 (1)従前の日本帝国主義研究では戦前・戦時と戦後を連続して把握する視点が希薄であり、また近年の「低開発国経済発展理論(開発論)」に基づく研究においては、戦後の出発点を戦前・戦時の問題の克服のあり方に求めていく、という歴史的考察の視点が欠落している。 (2)以上の認識を前提に,戦前・戦時の「日本帝国経済圏」に組み込まれた国・地域の経済実態を対象に、総花的分析を避け、それぞれに共通する次の四つの問題に限定して研究を進めてきた。A)インフレーションとその克服過程,B)土地改革,C)貿易と鉄関係,D)経済の復興と再生過程 3)平成4年度は主に戦前・戦時期を対象とし、研究会・合宿等を通じて研究者相互の共通の認識にほぼ到達でき、戦後についても資料の収集・整理をある程度進めてきた。 こうして東アジア経済圏におけるそれぞれの国・地域の抱えていた問題とその克服過程を歴史的に解明できるようになった。なお、研究成果は、「研究成果報告書」とは別に、より本格的な共同著作として出版社より刊行できる見通しができたことも付記しておく。刊行は平成5年度末か遅くとも6年上半期となる予定である。
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