大都圏自治体における「住宅マスタープラン」と「重点地区計画事業」の政策有効性に関する比較研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04301086
• 研究機関: 京都府立大学
• 研究代表者: 広原 盛明 京都府立大学, 学長 (90046475)
• 研究分担者: 間野 博 間野まちづくり研究所, 所長 ; 塩崎 賢明 神戸大学, 工学部, 助教授 (20127369) ; 安藤 元夫 近畿大学, 理工学部, 教授 (90140326) ; 梶浦 恒男 大阪市立大学, 生活科学部, 教授 (30047138)
• キーワード: 住宅マスタープラン / 重点地区事業計画 / 大都市自治体 / 住宅基本条例 / 住宅政策 / プロジェクト / 大都市住宅問題

研究概要

1.1993年度は、主として関西の大都市圏自治体を対象として、住宅マスタープラン担当部局のヒアリング調査と資料収集及び重点地区事業の現地調査を実施した。まず府県レベルの自治体としては、従来から公営住宅団地建設やニュータウン開発事業面で多大の実績をもつ大阪府を対象とし、建築部住宅政策課を中心に調査を行った。しかし住宅政策の計画化すなわち「住宅マスタープラン」の策定面においては、大阪府は東京都に比較して著しく立ち遅れていることが判明した。これは、大阪府と府下市町村との連携が主として国の補助事業導入に係わる実務的関係の域を出ず、住宅政策の計画化に不可欠の住宅事情や住宅問題の調査分析、政策立案に関する情報交換や研究討論などが弱体であることの反映であろう。また政策的連携が最も必要とされる大阪府と大阪市との関係が円滑ではなく、そのことが大阪府住宅政策の文字通りの「空洞化」を招いている。
2.次に指定都市レベルでは神戸市・大阪市、衛星都市レベルでは西宮市・寝屋川市という地域特性も行政手法も対照的に異なる4都市を選んで調査を実施した。結論的にいえば、神戸市・西宮市は以前からきわめて計画的に住宅行政を展開しており、住宅マスタープランについても、神戸市は1988年度から1990年度にかけて、西宮市は1989年度から1993年度にかけて既に策定済である。一方、大阪市・寝屋川市は、事業プロジェクト型の住宅行政即ちここでいう「重点地区事業計画」の推進を重視しており、住宅政策の体系化・計画化に必ずしも関心を示さず、住宅マスタープランも策定していない。この違いは、大阪市・寝屋川市の抱えている課題が常に具体的で即効的な解決を求める性格のものであること、議論より実行を尊ぶ行政体質が根強く、マスタープラン型住宅政策の計画的展開よりもプロジェクト型事業の実施を好む気風が強いこと、などに拠るものである。
3.本来、住宅マスタープランとプロジェクト事業は対立するコンセプトではなく、互いに補完し合う関係でなければならない。しかし同じ関西の大都市圏自治体でありながらどちらかといえば兵庫県側はマスタープラン型、大阪府側はプロジェクト型に強い行政体質を持ち、またそれに適合した行政手法を採用しているといえる。

研究成果

• [文献書誌] 広原,盛明: "現代市区改正事業論-まちづくりと住宅づくりの連携を通して" 日本都市計画学会誌「都市計画」. 41. 9-16 (1992)
• [文献書誌] 梶浦,恒男: "インプルーブメント型まちづくりへの住民参加方式についての研究" 日本都市計画学会学術研究論文集. 28. 805-810 (1993)
• [文献書誌] 梶浦,恒男: "区分所有住宅における借家人の管理参加" 日本建築学会計画系論文報告集. 44号. 115-125 (1993)
• [文献書誌] 安藤,元夫・塩崎,賢明: "改善型まちづくり概念の再検討" 日本建築学会住環境小委員会誌「住環境整備」. 41-52 (1993)
• [文献書誌] 間野,博: "パートナーシップの計画学-カルテェ・ラムール" 日本建築学会誌「建築雑誌」. 108. 34-35 (1993)
• [文献書誌] 間野,博: "住宅団地をはぐくむ-木造賃貸住宅密集地区の再生" 日本都市計画学会誌「都市計画」. 40. 51-55 (1991)
• [文献書誌] 塩崎,賢明 編著: "賃貸住宅政策論" 都市文化社, 284 (1992)
• [文献書誌] 塩崎,賢明 訳著: "コミュニティ・アーキテクチャー" 都市文化社, 264 (1992)