研究概要 |
本研究の課題は、人口・居住の動態,諸産業の立地動向,そして生活空間の変容などに焦点を合わせ,東京大都市圏,中京圏,京阪神圏の構造変容を地理学的に考察することであるが,本年度はデータベースの作成や圏域の設定などの基礎的作業と概観的考察を行った.(1)東京大都市圏矢野は東京大都市圏の市区町村界の境界をGISのパッケージにベクターデータとして入力し,白地図と属性とを合わせた分析を可能にするシステムを構築した.川口は,1965,75,85年を基準として,通勤,買い物,業務移動,電話に関する資料を収集し,パソコンにてデータベースを作成した.佐野は,東京大都市圏における住民の生活行動や生活関連産業の実態を把握することにより,広域生活圏域を明らかにした.分析は人口動態・生活産業立地動向を中心に行った.(2)中京圏村山は,人口移動の起終データを用いて中京圏の機能構造を探った.林は,名古屋市の近郊地域における近年の構造変化を解明するため,人口,農業,工業,商業・サービス業,それに交通・通信の分野から研究を行った.谷内は,日本の都市システムに関する従来の研究成果を3大都市圏・広域中心都市を中心に整理し,中京圏の位置づけについて,東京圏,京阪神圏および広域中心都市と比較しつつ多面的に検討した.(3)京阪神圏山田は,1960年以降の国勢調査報告の中から人口・世帯の総数の他,65歳以上人口,外国人人口,学歴構成,1世帯当たり畳数,昼夜間人口比を市町村別に抽出し,分析に必要な基礎的計算を行った.小長谷は,パーソン・トリップデータを用いて地域間の連結体系を分析した.戸所は,多核型都市圏構造が強化され一体性を強めつつも都市圏内部では三都の独自性が強まっていることを示した. 以上の分析結果を踏まえ,研究代表者高橋と富田は,三大都市圏の構造変化を定量的に把握するための枠組み(指標,分析範囲,時期区分)を構築した.
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