研究課題/領域番号 |
04302021
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
増田 俊明 静岡大学, 理学部, 助教授 (30126164)
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研究分担者 |
能田 成 京都産業大学, 教養部, 教授 (30065841)
乙藤 洋一郎 神戸大学, 理学部, 助教授 (90160895)
板谷 徹丸 岡山理科大学, 蒜山研究所, 教授 (60148682)
丸山 茂徳 東京工業大学, 理学部, 教授 (50111737)
和田 秀樹 静岡大学, 理学部, 助教授 (20126791)
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キーワード | イスア / グリーンランド / 縞状鉄鉱層 / メタチャート / 超塩基性岩 / マイクロブーディン構造 / イリジウム / 変成作用 |
研究概要 |
1.層状チャートのリズム解析: 層状チャートについて、ほぼ5mの連続サンプルの詳細な柱状図の作成に着手した。作業は十分進んではいないが、5種類の層より成っていることがわかった。緑色層、白色層、黒色層、灰色層、茶色層である。各層の構成鉱物の違いは明確ではないが、石英が主要鉱物で、この他にカミングトン閃石、磁鉄鉱、電気石、炭酸塩鉱物が含まれており、これらの鉱物の量比の違いで、5種類の層が識別されるものと思われる。なお、黒色層の一部が、多量のイリジウムを含んでいることが、海老原充氏の分析で明らかになった。イリジウムは地表にはほとんど存在しない元素なので、地球外物質の落下が起こっていたのではないかと考えられる。目下、他のサンプルについてさらなる分析を行う計画をしており、この問題は今後も追求するつもりである。 2.縞状鉄鉱層の地球化学的研究: 縞状鉄鉱層は、見掛け上、5種類の層が複雑に積み重なっていることがわかった。白色層(ほとんどが石英から成る)、灰色層(石英が主体で、磁鉄鉱が3-10%含まれている)、黒色層(磁鉄鉱が30%以上含まれており、残りは石英とカミングトン閃石から成る)、赤色層(ほとんど石英から成るが、少量の赤色鉱物が含まれている)、及び、緑色層(主としてカミングトン閃石から成る)の5種類である。これらのうちの、白色層、黒色層、灰色層について微量元素の分析、特にイリジウムの分析を試みた。結果としては、これらのいずれの層からも有意な量のイリジウムは検出できなかった。 3.変成変形作用の研究: 変成鉱物の組み合せを詳細に検討して、イスア地域を3つの変成度の地域に分帯した。北部ほど変成度が低く、低変成度から順に、緑色片岩相、角閃岩相下部、角閃岩相上部とした。塑性変形を定量的に示す微細組織として、電気石のマイクロブーディン構造を泥質片岩中に発見した。この組織から推定される伸長歪は約3%であった。また、同様の泥質片岩から、ざくろ石のスノーボール組織を発見した。これは、結晶成長中にざくろ石の粒子が回転したことを示す組織であるとされている。このことにより、変成作用と同時に剪断変形が起こったことがわかった。 4.マントルの変形: 超塩基性岩中に、輝石のブーディン構造を発見した。これは輝石の周囲にあるカンラン石が流動できる条件下で形成されたものである。カンラン石は通常の変成作用時の温度(せいぜい700℃以下)ではほとんど流動しないことから、このブーディン構造の原因となった変形はマントル内で起こったことを強く示唆している。
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