研究課題
1992年度に釧路で起きた地震に関連して、7月に釧路市内外で地盤の常時微動観測を行なった。釧路市東郊の地方気象台では、地震に際して900ガルを超える最大加速度が観測された。本研究グループでは7月に釧路へ出張し、気象台を中心に多くの地点で常時微動の一斉観測を行った。その結果は現在解析中である。また気象台地点の地盤構成についても議論しているが、特に振動を増幅する特異性は見受けられていない。またこれと平行して、釧路市郊外の湿原上でも微動観測を行った。そのうち1グループは釧路湿原という超軟弱地盤上の微動を測定した。それによると、表層の泥炭厚さよりもその下も含めた沖積層厚さと微動周期や振幅との相関が見受けられる。また釧網本線沿いでも別のグループが微動観測を行い、微動特性と鉄道盛土の被害発生との間に相関を見い出しつつある。7月にはグアム島でマグニチュードが8を越える地震があった。研究グループの一人は土木学会耐震工学委員会の依頼により現地に出張し、地盤関係の被害調査を行なった。その結果、地震の規模に比べて被害が極めて小さい、石灰岩からなる堅硬な地盤が被害を少なくした一因である、との結論に至った。軟弱地盤ではやはり液状化などの現象も見られ、地盤種別と被害程度との相関を観察することができた。次に地盤の地震応答解析法の開発について述べる。従来の手法の中で等価線形化法は広く使われかつ実績もある。しかし振動に含まれるあらゆる周波数成分に対して同一のせん断定数と減衰比を使用することに問題がある。低周波成分はおおむね変位振幅やひずみが大きいので、小さめのせん断定数、大きめの減衰比がふさわしい。したがって土の非線形性の影響にも敏感な成分である。一方高周波成分はヒゲとも俗称され、最大加速度はこの成分によって達成される。周波数が大きいので変位やひずみは小さく、解析では大きなせん断定数、小さな減衰比がふさわしい。それにもかかわらず、現状では同一の定数を使って解析を行なっており、その結果たとえば高周波成分の減衰比が過大になって、最大加速度は伝播途中で計算上弱まってしまう。この問題を解決するために、周波数成分ごとに別々の有効ひずみ振幅を決定し、これを元に周波数成分ごとに異なるせん断定数、減衰比を使って応答計算を行なう手法を開発した。この方法をいくつかの地盤に適用し、良い成果を得た。
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