研究分担者 |
花木 啓祐 東京大学, 先端科学技術センター, 教授 (00134015)
浅枝 隆 埼玉大学, 工学部, 助教授 (40134332)
磯部 雅彦 東京大学, 工学部, 教授 (20114374)
三村 信男 茨城大学, 工学部, 助教授 (60133089)
柳 哲雄 愛媛大学, 工学部, 教授 (70036490)
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研究概要 |
昨年度に引き続いて,海面上昇によって生じる追加的な砂浜の侵食量の評価について検討した.昭和30年代以降に著しい地盤沈下を経験した新潟北東部海岸を対象にして,実際に生じた汀線の後退量とBruun則を用いた計算値を比較し,Bruun則が妥当な後退量を与えることを確かめた.また,不規則波浪による海浜変形の実験を行い,Bruun則および新しく提案した平衡地形則との適合度を検証し,Bruun則においては係数値を適切にとれば適合性が比較的よいことが確認された. 東アジア沿岸域の地盤高を調査した前年度の結果に基づき,当地域の海面上昇に対する影響を考える上では河口部で想定される諸問題を検討することが重要であるとの観点から,地形変化に与える河川流や平均水面の上昇の影響を定量的に計測し,海面上昇が沖合いのバーの移動や河口テラスの形成過程に支配的な役割を果たしていることがわかった.また,最近の現地観測から,実際の河川における塩水の遡上距離に対する混合型の差の影響は小さいことが報告されており,このことは逆に塩水遡上の変化予測にあたっては弱混合型のみならず強混合型についての検討も必要であることがわかった. 東アジアの海岸線・沿岸部についての自然・社会条件を把握し,海面水位上昇時の問題点についての理解を深めるために,IPCC東半球ワークショップに参加し,議論を行った.また,自然・社会条件が異なる場合に,とられる対応策は当然異なると思われるため,嵩上げ以外の土木技術的各種の対応策についても整理を試みた.太平洋島しょ国やアジアの沿岸においては人口圧力が大きく,これが沿岸部の災害に対する脆弱性を増幅している傾向がうかがえた.土木技術的な対応策も,沿岸の総合的な管理計画の下での適切な組み合わせが配慮されることが望ましいと思われる. 地下水の水質及び河道内の水質,水温,生態に対する海面上昇,降雨変化の影響を評価した結果,海面上昇が数10cmの範囲では地下水への塩水侵入に対する影響はきわめて小さく,塩水遡上については平均的に2-3kmの上昇が期待されることがわかった.また,強混合状態の感潮域における水質が温暖化によって受ける変化を予測した結果,温度上昇による溶存酸素の減少と海面上昇に伴うBODの流れ方向の分布の変化が起きること,温度上昇による微生物反応の促進の効果は小さいことがわかった.
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