研究概要 |
本研究は自然な老化過程のなかでおこる高齢者の視聴覚機能の減退に着目し,このような機能減退が引き起こす高齢者の情報受容力の低下とそれを補う設計の方向性を探ることを目的としている.高齢者が老化によって視聴覚機能および聴覚機能が変化すること,すなわち視界が黄変化し,可聴域(特に高音域)が狭められることはよく知られている.このような減退により高齢者の情報環境は青年のそれと比較して著しく劣化していると言えよう.地域生活空間において,高齢者の視聴覚機能減退を補償する方向でサイン計画などの情報環境を設計していくことは高齢者の社会参加を維持していく上でも非常に重要である. 平成4年度は以上のような問題意識に基づき,高齢者の視覚機能,聴覚機能それぞれの機能減退についての基礎的な研究を続けるとともに,機能減退の程度に応じてどのように情報環境の劣化がおきるかを評価するためのシミュレーターの開発をおこなった.これはパーソナルコンピュータに映像および音響のインターフェースを付設し,電子スチルカメラ,DATレコーダーにより収録された地域生活環境をデジタルデータとして入力・加工するものである.現在,高齢者の機能減退をシミュレートするようなデータのフィルタリングの方法を試行錯誤している. 平成5年度はデータの収集をはかることによって高齢者の情報環境を評価するとともに,今後の地域生活環境の設計に生かすために機能減退の影響を受けにくい色彩・配色や音のデザインを探る.
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