研究課題/領域番号 |
04304043
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研究種目 |
総合研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
泌尿器科学
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
大澤 炯 琉球大学, 医学部泌尿器科, 教授 (70045251)
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研究分担者 |
井上 正康 大阪市立大学, 医学部・第一生化, 教授 (80040278)
武居 洋 琉球大学, 医学部・第二生化, 教授 (70039501)
斉藤 泰 長崎大学, 医学部・泌尿器科, 教授 (70039832)
小磯 謙吉 筑波大学, 臨床医学系・泌尿器科, 教授 (20010192)
河邉 香月 東京大学, 医学部・泌尿器科, 教授 (20124670)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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キーワード | 上皮成長因子(EGF) / デイフェニールアミン(DPA) / N・エチール-N-ハイドロオキシエチールニトロサミン(EHEN) / IL-6 / 線維芽細胞増殖因子(FGF) / 多嚢胞化萎縮腎(ACDK) / MDCK / Oxygen toxicity |
研究概要 |
1)透析腎の病態と嚢胞の形成:(1)長期透析を続けると小児患者では糸球体上皮に由来する細胞が増殖しembryonal hyperplasia of Bowman's capsular epitheliumが見られ、成人透析患者ではACDKを生ずる。成人のACDKに癌を発生する機序が、小児ではこのような幼若な細胞の増殖をもたらす可能性がある。(2)嚢胞壁はその抗原性から、近位のみならず遠位尿細管の性質をも示し、また特定の抗原の消失も見られた。(3)尿細管上皮の増殖にはEGF,FGF、IGF-1などが促進、TGF-βが抑制的に働くが、嚢胞液内のEGFはごく少量であり、TGF-βの多くは不活性型であった。液中のCFPAと嚢胞の大きさとに弱い相関が見られ、CFPAを持つ因子が嚢胞の増大に関与する可能性がある。(4)良好な腎機能を有している症例は、腎移植後経過年数と共に嚢胞が縮小した。2)嚢胞形成と発癌:(1)薬剤を用いたマウス嚢胞形成実験で、癌遺伝子のC-mycが一過性に出現した。(2)ras-P21抗体とレクチンを用いた検討からACDK嚢胞壁上皮には異形成化傾向が見られた。(3)嚢胞壁(液)におけるグルタオチン代謝が正常と大きく異なり、嚢胞では活性酸素毒性が発現しやすい状態が認められた。(4)癌を伴った嚢胞内液のIL-6濃度は、癌なし嚢胞より高く、腎癌増殖との関連性が示唆された。(5)ACDKに合併した腫瘍の起源は免疫組織化学的に近位尿細管であろうと推測され、組織型も良好であるが、ヒト正常近位尿細管に存在するWTL抗原は、嚢胞壁や癌組織にも認めなかった。3)疫学的・免疫学的検討:(1)透析患者の腎癌罹患率は高く、年令、性をマッチさせた一般住民と比べ6.3倍であった。特に30〜59歳の間で発現頻度が高かった。(2)嚢胞を伴う腎癌は全腎癌症例の4%で、男性に多く、嚢胞の種類としてはACDKや単純性、多房性腎嚢胞などが多かった。透析患者では腎癌は両側、多発性の傾向を示し、T_1以下で顆粒細胞型が多かった。(3)透析患者間ではACDK群と非ACDK群との間に細胞性免疫能の差異は認めなかった。(4)透析開始5年以下の患者では、健腎対照者にくらべ、サイトカインの産生能や細胞障害能の低下した症例が多く、癌発生促進因子として検討を要する。
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