研究課題
平成4年度の研究は、中国の章治経済改革の現状を把握することに重点をおいた。たまたま昨年10月には、中国の執政党である中国共産党が第14回党大会を開き、中国の改革・開放を加速することを決め、さらに社会主義市場経済システムの樹立を打ち出した。社会主義市場経済論を打ち出した背後には、計画と市場はともに経済的な手段にすぎず、社会主義と資本主義を区別する本質的なものではない、という認識がある。しかし、中国経済の実態は、中央の指令的目標にしたがって生産する計画経済の、市場経済への移行が進みつつある。特に、消費の分野では、その傾向が顕著で、穀物価格も市場で決まるところが、増している。糧票(食料キップ)は廃止の方向に向かっている。また、発展を続ける私有企業の中には、赤字に悩む国営企業の吸収合併を進めていることろもある。しかし、問題は経済改革と政治改革の関係にある。中国では「小政府、多服務(小さい政府、多いサービス)」というスローガンが、かかげられており、市場経済化の進展に伴い、巨大化した政府機構をスリムにすることをめざしている。しかし、これは行政機構改革であり、政治の民主化とはいえない。中国指導部は、経済発展のためには政治的安定が必要である。という論理で、政治システムの改革にとりくむことを避けており、国家安全法の制定など、秩序維持のための法制度の整備を急いでいる。こうした、政治的には引き締めを強化しつつ、経済発展をはかる方式は、台湾やシンガポールの歩んだ道に似ている。政治的民主化の課題はおきざりにして、開発独裁型の国づくりを進めつつある、といえよう。今後は、本年度の研究で得られた。中国の政治経済改革に関する知見をもとにして、台湾やシンガポールを経験と比較しつつ、中国の動向についての研究をより深めていきたい。
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