研究課題
遺伝現象に関する基本的な概念である突然変異は、遺伝子の損傷、すなわちDNAの化学的、物理的な変化によって引き起こされる。遺伝子の損傷から変異に至る過程については、多くの研究者によって研究されてきた。逆に、突然変異を測定することによって変異作用、遺伝子損傷作用を持つ物質を検出することも広く行われている。このような突然変異の研究は、現在我が国において大変盛んになり、変異原物質の検出、DNA付加体の同定、DNA上の変異箇所の決定、修復酵素の機構解明、変異修飾因子の発見など、多くの成果を上げつつある。しかし、変異原物質の研究と、分子生物学的手法による変異の誘導メカニズムや修復酵素の研究との連係が不十分であった。そこで、本研究では、遺伝子損傷性物質の検出と連係して、突然変異の過程の分子レベルでの解明を行うことを目指し、各分野の専門家が集まり会議を行った。(1)変異作用、遺伝子損傷作用の検出系について、(2)DNA損傷が変異に固定される過程の解析、(3)変異の生成に影響を与える因子の基礎的研究、の3つの大きな項目について、有意義な討論がなされた。また、平成5年1月末には、公開シンポジウムを行い、最近の研究成果と問題点について公開の場で討論し、今後の研究の進め方などについて多くの示唆が得られた。本研究班は、次年度の重点領域研究への採択を目標として設定されたものであり、そのための討議を行った。