研究課題
情報処理行動は、一般に、外的な刺激情報と主体の側の積極的な情報取り込みの活動との相互作用によって成立する。本研究では、動物、幼児、健常成人、脳損傷者に、それぞれに応じて情報の意味レベルを課題状況を段階的に変えながら、取得情報の主体の側の積極的な操作を含んだ課題を設定し、情報処理行動の成立と崩壊の過程を比較考察しようとする。そのため、(1)反応の結果を明示する信号刺激の取得に関する行動を動物とヒトを用いて実験的に検討する、(2)視覚的形態認知に必要な情報のフィードバックについて幼児から健常成人にわたって実験的に分析する、さらに(3)言語処理および視覚認知機能に関して、脳損傷者と健常成人を比較検討し、崩壊の過程を分析する、の3つの資料について統一的な観点から取り上げることにした。現在までに、(1)健常成人と脳損傷者について、CRT上のドット・パタンを探索させて与えられた情報の多少に応じて、方略とパタンの体制化が変化するかどうかの分析、(2)視野限定条件下での図形認知課題において、成人を被験対象として被験者の手にしたポインタ周辺の限られた窓内のみがディスプレイ画面上に提示される条件で、窓の大きさ、提示時間を変化し、図形探索の方略と図形認知との関連について検討する実験、(3)中枢性語音弁別障害例(語聾)を被験対象として語音系列の認知に及ぼす課題要請の相違(1.順唱:逆唱、2.口頭反応:視覚的指示反応)の効果の分析、などの検討をおこなった。現在、以上の実験的資料をもとにして、情報の意味レベルや主体への課題状況に応じた取得情報に対する主体の側の積極的操作の、(1)信号処理行動における役割、(2)視覚的形態認知における役割、(3)言語処理行動における役割について統一的視点から考察を進めている。
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