研究課題
歴史上どの時代、どの地域にも、あるいはどの社会にも、程度の違い、あるいは深刻さの違いはあれど、差別と迫害はみられた。その社会における差別と迫害を検討することは、その社会が抱えていた問題点を検討することでもある。一般的に差別や迫害といっても、実にさまざまな差別と迫害があった。差別される側が受ける精神的苦痛は小さくなかったにしろ、せいぜいかれらに対する社会的評価が低く、かれらの社会的上昇に圧迫が加えられた程度の差別から、文字通り生命の安全が脅かされるような迫害までさまざまな差別や迫害があった。我々は全員専門分野を異にする研究者でもある。そこで本年度は時代と地域を異にする各人の専門分野における差別と迫害を探ってきた。つまり、その範囲はシュメール、古代ローマ、中世初期、中世後期、西欧近世、19世紀ヨーロッパ、現代ヨーロッパといった西洋史の各分野に及ぶ。各人はそれぞれの社会に現われた差別と迫害の実態を把握に努めてきたこれまでの研究成果を基に、今後はその差別や迫害がなぜ発生したのか、またいかなる結果を引き起こしたのかの解明に努める。