研究課題
国立国語研究所が昭和24年から収集、蓄積している国語関係新聞記事資料は、日本で唯一の資料であるとともに、研究資料としても、戦後の日本人の言語及び言語生活の歴史を見る上で貴重なものである。この蓄積記事の有効な活用方法のひとつにデータベース化がある。本研究は、(1)蓄積記事に関する基礎情報(日付、掲載紙名、見出し等)を記載した『国語研究所新聞記事データベース』(『データベース』)を作成し、あわせて、(2)蓄積記事を資料として、日本人の言語生活の研究を行うことを目的としている。平成4年度は、昭和62年分から遡る形で蓄積記事に入力を外注し、ほぼ当初の予定通り、全体の約2分の1について基礎的な情報の入力を終えた。入力済データはチェック、修正し、記事検索及び記事内容の把握に有用な情報を付加して整理した。膨大な量の蓄積記事を集中的に入力・整理することによって、蓄積記事の特性や年代毎の傾向をより確かに把握することができた。ここで得られた知見は、今後、分類やキーワードの整理・検討をすすめ、『データベース』を改良していく上で役立つものである。また、作成された『データベース』及び蓄積記事自体を資料として、その具体的な活用法について検討し、研究分担者が試験的な研究を行った。例えば、「投書に見られる言語意識の変化」や「国語関係新聞記事データベースの設計と活用について」などである。このうち言語意識の変化については、日本人が何を「ことばの乱れ」としてとらえてきたのか、その「乱れ」に対する意識がどのように移り変わってきたのか、社会的属性による相違はあるのか、等について資料収集及び分析を試みた。今後、『データベース』を整備し、より多くのデータを詳細に分析することによって、これまでの考察の妥当性を検討し、試験的研究の成果をまとめる予定である。