研究概要 |
スピン1を持つ重陽子による原子核散乱では,散乱前後で重陽子スピンの反転(ΔS=1.2)が可能である。この一重及び二重スピン反転確率を測定することにより,重陽子だけが励起可能な未知の荷電スカラー.スピンモードを発見し,有効相互作用の中でも最も研究が遅れている荷電スカラー.スピン力や核構造の情報を得るのが目的である。 重陽子スピン反転確率は,偏極ビームを使った二回散乱法により測定されるヴェクトル及びテンソン偏極移行量から求められる。そのためにスペクトロメータの焦点面に汎用重陽子偏極度計を建設した。昨年度までに,主要部分(MWDC位置検出器,能動型二回散乱体,6.5×6.5×220cm^3のプラスチックシンチレータ40本によるホドスコープ,カロリーメータetc.)の製作・調整を終えた。 今年度は,偏極度計の有効偏極分解能(iT_<11>,T_<20>,T_<21>,T_<22>)の較正のために,理化学研究所のリングサイクロトロンからの270MeVの偏極重陽子ビームを利用して測定を開始した。現在までに,散乱体のプラスチックシンチレータ中の炭素(^<12>C)と重陽子との弾性散乱を利用するヴェクトル偏極分解能(iT_<11>),ならびに水素(^1H)とのエキゾチックな^1H(d,^2He)反応によるテンソル偏極分解能(T_<20>,T_<22>)について解析を終えた。テンソル偏極分解能のなかでT_<21>成分は,d+p弾性散乱を利用して求めるが,現在解析を進めている。解析結果から,ほぼ当初予定した性能が有ることが明らかになった。これらの成果は,1994年9月に米国インディアナ州で開催された,SPIN94偏極国際会議での招待講演で発表した。 また,重陽子非弾性散乱で励起される荷電スカラー型一・二重スピン反転励起の応答関数の理論的研究も進めた。
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