研究概要 |
日本海の白黒ラミナを構成する珪藻群集は、地球規模の氷期-間氷期の繰り返しによる気候サイクルとそれに伴う海水準変動に連動している日本海の海水循環様式の変化に影響を受けて、第四紀の200万年を通じて周期的に大きく変動してきた。 ODP797地点の過去20万年間における珪藻遺骸群集は、氷河性海水準変動の影響を受けていた。海水準の高い間氷期には、対馬海流が強く流入し、日本海北部で冷却されて底層水となつた。深層水循環が活発となることによって、珪藻の増加で代表されるような生物生産性が高くなった。一方、海水準の低い氷期には対馬海峡がほとんど閉鎖されて日本海が孤立した状態となった。周辺陸域から河川水が日本海へ流入し、表層を覆ったので、生物生産性が低下すると共に密度成層が強化され、海底は著しく還元的になった。 過去20万年間における珪藻遺骸群集を構成する様々な構成要素の時系列変動は、地球軌道離心率の変化による周期(95,000年〜124,000年)や地軸の歳差運動が引き起こす各季節での地球と太陽との距離の変化による周期(19,000年と23,000年)に相当する周期を基底変動とし、数千年周期のダンスガード・オイッシャーサイクルに相当する多数の数千年オーダの周期群を高周波領域に伴っていることが判明した。さらに、ミランコビッチサイクルやダンスガード・オイッシャーサイクル以外の多数のサイクルも検出され、珪藻で代表される生物生産性や堆積作用に基づいてサブシステムとしての日本海のダイナミックスを地球規模の海洋-気候変動と関連づけて解明できる見通しを得た。
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