研究概要 |
初年度(平成4年)の補助金によって購入した蛍光X線分析装置で南部北上帯と領家帯の花崗岩を分析し,本研究で開発したCHIME法で副成分鉱物の年代を測定して,花崗岩マグマ固結過程に関する次の成果を得て公表した. 1.南部北上帯の平沢花崗岩は,2×5kmの岩体全体にわたり,組成(SiO_2=73-74%)と年代(約240Ma)が均質である.このような岩体は,ほとんど固結した段階のマグマが流動・混合して生じたことを明らかにした. 2.南部北上帯の奥火の土花崗岩は,高いK_2O/Na_2O比と低いCaO/(Na_2O+K_2O)比で特徴づけられる.モナザイトやジルコンのCHIME年代は約250Maであるが,約400Maの粒子も存在する.副成分鉱物の希土類元素分配から,本花崗岩は,古い地殻物質を同化しながら,ペルム紀末期に形成されたものであることを明らかにした. 3.領家帯の三都橋花崗岩は,80±20Maの年代をもつzoned plutonであること,塩基性の岩石は集積相であること,酸性の岩石は同源の残液であること,集積相は残液の流動で上昇したこと,岩体周辺部分だけが泥質変成岩を同化して白雲母・ザクロ石で特徴づけられるAl過剰なS-タイプ花崗岩になったことを明らかにした. 4.領家帯の白亜紀伊奈川花崗岩には,Ca(Ti_<0.5>Al_<0.5>)(F,OH)_<0.5>O_<0.5>SiO_4の組成をもつ熱水性チタナイトが産する.この化学組成と鉱物共生から,マグマ固結時に分離した流体のフッ素の化学ポテンシャルを解析した. 5.花崗岩の黒雲母は,層間のKとOH_3^+の置換,八面体シートの2価鉄の酸化と2八面体化,2八面体シートのFe^<3+>=Al置換,四面体シートのAl=Si置換の4つのプロセスが組合わさって,風化していくことを明らかにした. 6.花崗岩の壁岩をなす中・古生層中の砕屑性モナザイトやジルコンのCHIME年代の多数測定した.これにより,日本列島の中・古生層の後背地には1700-2000Maの古い大陸地殻が広く分布していたことが明らかになった.
|