研究概要 |
平成4・5年度の科学研究費補助金を受けて,領家帯と南部北上帯の花崗岩を蛍光X線分析し,副成分鉱物の希土類元素分配やCHIME年代を測定して,花崗岩マグマ固結過程に関する次の成果を得て公表した. 1.領家帯の武節花崗岩は副成分鉱物としてアパタイト・モナザイト・ゼノタイム・ジルコンを含む.これらの晶出順序は希土類元素と燐あるいはZrと珪素の溶解度積で決まることを速度論的に解析した. 2.南部北上帯の氷上花崗岩はIタイプに属し350Maの固結年代を示すこと,これまで氷上型花崗岩と一括されてきたものの中に250Maの花崗岩が存在すること,特に奥火の土花崗岩と平沢花崗岩は高いK_2O/Na_2O比と低いCaO/(Na_2O+K_2O)比で特徴づけられるSタイプに属し約250Maの固結年代を示すことを明らかにした.副成分鉱物の希土類元素組成から,250MaのSタイプ花崗岩の形成には地殻物質の同化が寄与したことを明らかにした.同様な地殻物質の同化は飛騨帯灰色花崗岩にも認められる.同化によるRb-Sr同位体非平衡の解析も行った. 3.領家帯の三都橋花崗岩は,80±20Maの年代をもつzoned plutonであること,塩基性の岩石は集積相で酸性の岩石は同源の残液であること,周辺部が泥質変成岩を同化してSタイプ花崗岩になったことを明らかにした.4.領家帯伊奈川花崗岩には,Ca(Ti_<0.5>Al_<0.5>)(F,OH)_<0.5>O_<0.5>SiO_4の組成をもつ熱水性チタナイトが産する.この化学組成と鉱物共生から,マグマ固結時に分離した流体のフッ素の化学ポテンシャルを解析した.また,花崗岩の黒雲母風化過程における八面体シートの2価鉄の酸化と2八面体化のプロセスを明らかにした. 5.花崗岩の壁岩をなす中・古生層中の砕屑性モナザイトやジルコンのCHIME年代を多数測定した.これにより,日本列島の中・古生層の後背地には1400-2000Maの古い大陸地殻が広く分布していたことが明らかになった.
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