本研究は、質量分離された金属クラスター堆積システムの試作を行ったものである。成果の概要は以下の通りである。 1.全体システムの試作:本システムは、イオン源、クラスター源、四十極質量分析計、イオン検出系及び差動排気から成り、主要部は、ベークアント可能なステンレススチール製である(Fig.1)。 2.FI質量スペクトルの測定:クラスター膜堆積の成果は、クラスターの電界電離(FI)と質量スペクトルが測定されるか否かにかかる。上記装置により、LiクラスターとZnクラスターのFI質量測定を行い、次の画期的な成果が得られた。1)存在しないとされているLi_3(トリマー)の存在が確認された。2)Znダイマー群のシグナル強度分布は、Znの同位体相対存在量から予測される理論分布と異なる。特に、後者は、ダイマー形成時における同位体の組み合せに選択性があることを示唆し、科学的に極めて重要な意味をもつ。 3.Znクラスター膜の堆積:質量分離されたZn_2^+イオンをエポキシ薄膜上に堆積させることに成功した。このZn膜の構造は非晶質であり、モノマー堆積膜の多結晶構造とは基本的に異なる。クラスター堆積により、特異な構造をもつ薄膜の得られることが期待される。
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