研究概要 |
複合材料の疲労損傷機構の解明を行うために,繊維を同一にして母材にエポキシ(熱硬化性樹脂)とPEEK(熱可塑性樹脂)の2種類を使い試験片を作成した。引張繰返荷重に対しては±45,±30度アングル積層構成を2種類に変化させた試験片を使用した。また,疑似等方性積層板の引張荷重方向が変化した場合の疲労特性の違いを研究するために2種類の積層構成を用いた。さらに圧縮繰返荷重を受ける複合材積層板の損傷機構を解明するために±45,±30度アングル積層構成2種類を試験に用いた。いずれの疲労試験においても片振,破断応力の60%以上の最大応力を用いて低サイクル疲労を生じさせた。計測した項目は次の通りである。1.繰返数と剛性低下,2.積層板自由縁の顕微鏡とレプリカによる破損観察,3.AEによる疲労損傷推定,4.剥離進展,5.破断繰返数と破断後の破断モード観察。 引張繰返荷重を受ける±45度試験片についてはエポキシ母材がPEEK母材より剛性低下率が大きく破断繰返数はかなり小さいことがわかった。[±45]_4エポキシ母材の場合自由縁のクラック発生密度とAEカウント数については繰返数100回を越えたところで急激に増加する。疑似等方性板が引張繰返荷重を受ける場合については引張荷重方向が変化することによって,また母材の違いによって破損モードが大きく変化することがわかった。圧縮繰返荷重を受ける試験片の場合,積層構成の違いによる破断応力の差はあまり大きくない。繰返数に対する剛性低下率については破断繰返数の30%から低下し,破断直前において60%程度に低下することが明らかになった。エポキシ母材とPEEK母材の破損モードはかなり違っており,エポキシ母材の脆性とPEEK母材の延性の特徴が観察された。
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