研究概要 |
極限環境下で安全に作動する高信頼性バルブの試作を目的として,従来使用されているバタフライ弁,仕切弁,ホロージェットバルブを取り上げ,モデルを用いた流れパターンの観察,実機損傷量の測定などを行った。特に構造が簡単で,流量制御特性が良好であることから,最も使用頻度が高いバタフライ弁を取り上げて,実機の十分の一の模型のバタフライ弁まわりの流れパターンを観察し,キャビテーション壊食に係わるキャビテーション衝撃圧を感圧紙により定量的に測定するとともに,ハイドロホンによりキャビテーションノイズを詳細に測定し,以下のことを明らかにした。 1.バタフライ弁下流管路壁面に生ずるキャビテーション壊食は,バタフライ弁まわりに生ずる局所的に高速となる領域が引き起こす強いせん断流れに深く起因していることが判明した。特に,壊食を生ずるのは,高せん断領域に発生する特異渦キャビテーションであることを,流れパターンの詳細な観察と,感圧紙にによる壊食領域の測定結果から明らかにした。 2.この強いせん断流れを抑制するために,バタフライ弁に突起物を設けて,流れを乱すことにより局所的高速流領域を拡散させて流速を低下さをると,壊食性が減少する可能性を,感圧紙によるキャビテーション衝撃圧の測定,および,ハイドロホンによるキャビテーションノイズの測定により明らかにした。 3.実機損傷例を詳細に調べた結果,弁及び周辺構成要素に激しい壊食を生じる渦キャビテーションは,上流キャビテータにより壊食が非常に促進されることが判明した。すなわち,極限環境下で安全に作動するバルブにおいては,上流キャビテータとなる可能性がある構造を絶対に回避しなければならないことを明らかにした。
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