研究概要 |
本研究の目的は,1ミリから数ミリの大きさのマイクロロボットを開発することである.その際に昆虫を規範とすることが大きな特徴だと考えている.これまでは人間や動物を規範として,ロボットの構造やアクチュエーション,制御などを考えてきたが,小さい寸法のものを作るには,やはりその寸法に似た大きさの生物が参考になると考えられる. 既に,いくつかの昆虫の特性を抽出してロボットの設計に役立てている.そのいくつかを述べておく.まず,昆虫は外骨格構造である.人間や動物は内骨格構造といって,中心に骨があり周りに筋肉がついている.一方,昆虫は体の外側が骨で,殻のような構造で,内部に筋肉が何本か付いていて,これら筋肉の収縮と弛緩によって外骨格を弾性変形させることにより羽を羽ばたかせたり足を動かしたりしている.本研究では,この構造をロボット作りの基本設計方針とした.また,アクチュエーションにおいては,非常に簡単な原理が用いられていることが多いようである.たとえば,オンオフ制御が基本となっている場合が多い. 具体的なロボットとしては1.5ミリx0.7ミリの蟻ロボットを完成した.これのアクチュエーションは特徴的である.左右の前後4本の足が体を支え、この4本の足を通して床から微小な振動が伝えられる.その振動数で2本の左右中足が共振して床を蹴って進むのである.左右の中足の固有振動数を変えてあるので、右だけ、左だけ、両方というように選択的に動かして旋回、直進を自由に行なえる.
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