研究概要 |
これまでの100nm厚ZnSe活性層を持つヘテロ構造に対して,井戸幅10nmの多重量子井戸構造を製作した。光励起により室温での青色発振特性を定量的に検討し,微分量子効率28%,内部光吸収係数9cm^<-1>の良好な特性を確認できた。また物理的な発振機構を検討し,バルクエキシトンのボーア直径7nmより広いこの量子井戸構造の場合には,電子正孔プラズマによる誘導放出であることを,励起強度依存性,温度依存性から議論した。 成長したZnSe/ZnSSe超格子のエキシトン吸収ピークの井戸幅依存性を検討し,井戸幅が狭くなるにつれて,理論と一致したブルーシフトを示すこと,ならびにフォトルミネッセンスの発光強度が増して発光量子効率が向上していることを確認した。 井戸幅2nmの狭い超格子構造において,ヘテロ界面の一原子層程度の揺らぎにより形成された局在エキシトンの,明瞭な吸収ピークを観測し,低温でこの局在エキシトンによる誘導放出を観測した。この発振機構として,吸収ピークとのエネルギー差の温度依存性から,100Kまではエキシトン電子散乱による誘導放出が生じていることを確認した。 窒素添加によるp型伝導度の向上に関連して、MOVPE法で問題になっている窒素と水素の結合によるアクセプターの中性化を防ぐため,500℃以上での高温成長によりこのボンドを解離させることを検討している。まずこうした高温成長において従来の減圧成長で問題となるn型ドーピングについて,常圧成長によりドナー原料の成長表面からの脱離を防ぐことにより,1x10^<18>cm^<-3>の低抵抗ZnSe膜の成長が可能であることを示した。 原子間力顕微鏡によるヘテロ界面評価の準備として,まずヘテロ構造を成長するGaAs表面の平坦性を調査し,通常の硫酸系のエッチングでは表面に2nm程度の凹凸が残るが,塩酸処理することにより大幅に平坦性が回復することを示した。
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