1.溶接接合部の破壊実験 前年度までに得られた知見(母財における延性き裂の発生条件)の溶接接合部への適用可能性について実験的に検証した。溶接接合部は、溶接入熱のサイクルによって材質が微妙に変化するので、延性き裂発生ひずみもそれに応じてかなりばらつく実験結果が得られた。このばらつきを除去するために溶接再現熱処理を施して、均一な溶接熱影響部を再現して実験を行なった。これらにより、全体的に見れば、溶接熱影響部の一様伸びが溶接止端での延性き裂の発生ひずみと対応付けられることが観察され、母材での知見が溶接部に対しても成立することが確認された。 2.構造物の地震応答挙動の解析 建築構造物が強震を受けたときの溶接接合部に対するひずみ応答特性を現実的な建築構造物を対象に解析的に調査した。これにより、骨組の崩壊パターンによって、溶接接合部ののひずみ履歴が大きな影響を受けることが明かとなった。特に、局部的な層崩壊をする崩壊パターンの場合にはひずみが大きくなり、逆に梁降伏先行の全体崩壊機構が確保されているときは、被るひずみが小さくなることが定量的に明かにされた。 3.破壊に対する設計指針の提案 鋼構造建築物の破壊に対する安全性をどのように照査すればよいかについて指針をまとめた。現段階では、延性き裂の進展と最終的な脆性破壊の条件が明かになっていないので、安全側の処置として、延性き裂の発生を以って設計規範とした。また、構造物の終局状態が、破壊で決まるか、座屈で決まるかの判定条件も提案した。
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