研究概要 |
この研究で得られた成果は以下のとおりである。 (1)Al-Mg-Zn,Al-Mg-Cu,Al-Mg-Ag,Mg-Ga-Zn系において準結晶相と近似結晶相の存在領域をメカニカル・アロイング法を用いて決定した。その結果、電子濃度がe/a=2.15-2.20で、しかも近似結晶が存在する組成よりMg濃度が数%高い領域において安定な準結晶が常に生成することを発見した。 (2)RT-型としてAl-Mg-Zn,Al-Mg-Pd、MI-型としてAl-Mg-Pd,Al-Ru-Cu,Al-Re-Pd準結晶を液体急冷法で作製し、その価電子帯をXPS,SXSおよび電子比熱係数の測定により調べた。その結果、RT-型の価電子帯は自由電子的であるが、フェルミ準位近傍に擬ギャップが存在することを見い出した。MI-型では遷移金属のd-バンドが広がり、しかもAl-3p電子分布が擬ギャップとd-バンドの相互作用により自由電子的なバンドから歪むことがわかった。そのため、ゾーンの折り返しにより生ずる状態密度のスパイク状ピークはMI-型では極めて鋭くなると結論した。 (4)このような価電子帯構造を基に電気伝導度、ホール係数の振る舞いを議論した。ホール係数の符号および絶対値からn型およびp型準結晶を区別した。さらに、電子比熱係数および電気伝導度がMI-型、RT-型を問わずキャリア数でよく整理できることを示した。この事実から大部分の準結晶は電子またはホールのどちらかが支配的になっていると結論した。 (4)レーザーアブレイション法によりAl-Pd-Mn準結晶薄膜の合成に成功した。
|