研究概要 |
低密度、高強度、高弾性率を有する高性能アルミニウム合金材料の開発を目的として、SiCウイスカ強化Al-LiおよびAl-Mg合金複合材料についてスクイズキャステキング法による作製技術の確立と、組織制御における性能特性の関係を解明した。 鋳造過程で、合金溶湯のSiCプリフォーム内への浸透経路に沿ってLi,Mg原子が捕獲され、欠乏する異常マクロ偏析現象を見出した。これはプリフォーム内に存在するSiO_2とLi,Mgとの反応によることを明らかにし、溶質欠乏溶湯をプリフォーム外に押出す方法を考案し、加圧条件、凝固条件を変化させて凝固組織を制御し、均一溶質分布の複合材料鋳塊を得るプロセスを確立した。Al-Li合金複合材料は、他の析出硬化型アルミニウム合金複合材料とは異なり、焼入れ時にδ'相が析出し、顕著な時効硬化を示し、Al-Li-Cu合金複合材料では、焼入れ時に導入される高密度の転位上に優先的にT_1相が析出し、強度増加に寄与することを明らかにした。時効硬化させた複合材料の弾性率と降伏強度は、強化材の体積率の増加に伴い直線的に上昇し、時効組織の変化により引張強度および破断伸びを制御することが可能となった。焼入処理により複合材料の母相中には引張残留応力が生じ、材料の引張降伏強度を低下させ、圧縮降伏強度を増加させる。また、液体窒素温度への冷却と室温への昇温により、引張残留応力を減少させて転位密度を増加させ、更に析出硬化の利用により複合材料の強度特性を大きく改善することができる。X線回折により求めた残留応力値は引張降伏強度と良い対応を示し、非破壊的に材料の強度を評価できる。Al-Mg合金複合材料において、強化材/母相合金界面での反応相はSiO_2量が多いとMgAl_2O_4が主体となり、界面の接合が良好となる。適正なSiO_2量の選定により、界面反応生成物の種類とその厚さを制御することができ、接合強度の制御と材料の強度特性向上が可能となる。
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