平成6年度は本研究の最終年度であり、前年度まで進めてきた幾つかの物質の相転移については研究を続行して行い、さらにあらたな測定技術、物質測定法を取入れ微視的領域の構造および物質を同時に調べる手法について応用を試みた。 1)BaZnGeO_4 この物質は、電子線照射により異なる構造を持つ相に相転移することが前年度までの研究で明かとなっている。これらの相が少なくとも3つ存在することが明かとなり、収束電子線回析によりその対称性や空間格子を決定した。また、試料を加熱することにより、これらの相は高温でII相に戻ることを見いだし、その動的変化を観察した。 2)Ba_2NaNb_5O_<15>(BSN)およびBa_2NaTa_5O_<15>(BST)との混晶 BSNは、573K以下でノーマル相から不整合相へ相転移し、さらに503K以下で擬不整合相と呼ばれる相に相転移する。不整合相の構造は、平均的には正方晶の対称性で2qの変調を持つが、電子顕微鏡観察から数nmのサイズの1qの変調を持つ斜方晶の強弾性分域に細かく分かれていることが明かにされた。503Kの相転移において位相境界であるディスコメンシュレーションの密度変化とともに、この強弾性分域の急激な変化が可逆的に起こることを見いだした。また、BSTとの混晶系における構造変化についても調べた。 3)微視的構造が与える電子回析パターンの解析 回析パターンにおける散漫散乱には散乱体の位置の相関についての情報が含まれている。最近普及してきたイメージングプレートを用いて、BaZnGeO_4およびRb_2ZnCl_4の整合不整合相転移におけるディスコメンシュレーションの作るパターンの特徴を回析強度分布およびディスコメンシュレーションの分布のフーリエ変換像より調べた。 そのほか、電子線ナノプローブと電顕に取り付けた光検出装置を利用して局所領域からの発光を分析し、微視的パターンを構造だけでなく物性的側面からも調べる研究を行った。
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