1.単一筋原線維の構造・力学特性と化学反応とを光学顕微鏡下で位相差像あるいは蛍光像として同時画像化し、解析することのできる顕微操作・顕微解析装置を製作した。この装置は、2波長蛍光励起装置、倒立顕微鏡、顕微鏡操作装置、蛍光用特殊フィルター・ミラー、double-View (W)光学系、超高感度テレビカメラ、ビデオ、画像処理コンピュータからなる。 2.アクチンフィラメントに特異的に結合し、しかもpH感受性を持つ蛍光物質SNAFL-Phalloidin (SF-Ph)を合成し、これを用いて筋原線維を染色し、ATPase活性に伴うpHの減少を画像として捉えた。しかしSF-Phは2波長励起・1波長検出に適しており、W光学系を活用できないので時間分解能は高々1s程度であった。そこで、1波長励起・2波長検出に適し真の意味で同時画像化が可能なW光学系を活用できるSNARF-Ph (SR-Ph)を特注したので、現在研究を進めている。 3.直径1μm程度のプラスチックビーズを70pNの力で捕捉し、顕微操作することのできるレーザー光ピンセット装置(赤外YLFレーザー(1W)、赤外光導入用に特注改造した倒立顕微鏡からなる)を組み上げた。 4.in vitro滑り運動系において、低濃度のATP存在下でアクチンフィラメントに発生する滑り力と1個のATP分子の分解に伴うステップサイズとを光ピンセットを用いて顕微計測した。滑り力は最大捕捉力の下で約3pNであり、ステップサイズは約10nmであった。一方、ATP非存在(硬直条件)下でのアクチンフィラメントと一個のミオシン(HMM)分子との間の硬直結合の破断力を計測し、平均9.2pNという値をえた。同時に得られた張力-歪み曲線の最大傾斜から求めたHMM分子の弾性率は、約0.5pN/nmであった。
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