研究課題/領域番号 |
04403002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西 信之 九州大学, 理学部, 教授 (60013538)
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研究分担者 |
笠谷 和男 福岡女子大学, 家政学部, 助教授 (10126964)
田縁 正治 九州大学, 理学部, 助手 (10117145)
大橋 和彦 九州大学, 理学部, 助手 (80213825)
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キーワード | 分子クラスター / 水の構造 / 疎水性水和 / 質量分析 / 溶液化学 / 酒の熟成 / 超分子 |
研究概要 |
溶液中で発生する超分子クラスターの研究に関して次のような成果があった。〔1〕エタノールと水の1:10から1:1の混合比領域では、エタノールポリマーの間に水がエタノールと同数あるいはそれ以下の割合で構成される層状の三次元クラスターが生成するが、少量の酢酸が糸の中に混入すると、クラスター中のエタノール1分子が酢酸で置き換ることがわかった。この酢酸を含んだクラスターは含まないものに比べて、約1.5倍の高い安定度を示した。これは酒の熟成機構と関連して興味深い結果である。〔2〕炭素原子を6個含む、n-ヘキサール,ミクロヘキサノール,及びベンゼン環と持つフェノールは、この順番で水に対する溶解度が低下する。これらの分子が水の中でどのような溶解のし方をしているのかを調べたところ、溶解度が低い物質ほど水和クラスターが形成され易いことがわかった。即ち、疎水基のまわりに強固な水のネットワークが形成され、一種の界面をなしていることがわかった。これまで「疎水性水和」といわれていた現像は、やはり疎水性圏のまわりでの界面発生現象として理解することができる。この水和シェルの中に、溶質濃度が高くなると次々と溶質分子が取り込まれるが、溶質分子どうしの重なりが大きく、かつ溶質のポリマーが水のシャルにうまく覆われ易い形態を取るものほどシェルの中への取り込みが有効に起り、濃度が低くても相分離に至る。〔3〕一方、親水性を強化したジオール類では、逆に水和クラスターを形成しにくく、まわりの純水クラスターを強化していくことが明らかになった。特に両端に親水基を持ち、間に直鎖状、又は環状のアルキル基を持つ化合物は、アルキル基のまわりの水クラスターを強化する。温度変化の実験から、これは、溶質分子の運動、即ちエントロピー効果によるものであることが明らかになった。一般にポリヒドロキシル化合物は水のクラスター構造を強化すると思われる。
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