水に中にエタノールを加えると数個から数十個のエタノール分子と水分子が組合わさった特有の超分子構造が出現することが証明された。モル比で2%のエタノールを水に加えると、X線回折実験から得られた構造関が、1000気圧の圧力下の水のそれと極めて類似のパターンを示し、その動径分布関数にこのような系に特有な変化が見られた。液滴の質量分析から、水和シェルの中にはエタノール分子が5〜8個が集積し、シェルの水分子層の厚さも1分子厚程度と皮の役割しか果たしていないことが解り、この大きなシェルの存在が、おそらくそれらの運動によって、水分子の構造を破壊し、ガラス状の水構造へと変化させているのではないかと考えられた。そこで、エタノールが濃い領域で質量分析法とX線回折法によって定量的なに解析を進めた。両方の測定が共に、エタノールのモル分率で0.2から1.0の間で共通の構造が存在することを示し、質量スペクトルから得られた、各エタノールポリマー水和体、(C_2H_5OH)_m(H_2O)_n、の平均水和数(N^a)は、エタノール会合数をm、水のモル分立をx_wで表わした場合、N^a={(m/4.2)-1}^2(x_w+0.85)の式で表現された。即ち、この水和クラスターの水分子数はエタノール会合数の二乗に比例して、また水の濃度に比例して増加し、これらのパラメーターにまったく依存しない部分も存在する。このクラスターが最も多い領域で測定されたX線動径分布関数には、7Åの所に特有のピークが現われ、これが水の量が少なくなるにつれて弱くなることが見い出された。詳細な解析から、エチル基が並んだ疎水層が7Å離れて平行に配置し、その間にサンドイッチ状に水分子の層が2枚の疎水面を繋ぐように入り込んでいるクラスターモデルを想定するとこれらの観測事実がうまく説明できることが判った。
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