研究概要 |
(X,eX)という名称は類似の(e,2e)分光からとったものであり、前者でのX線の代わりに後者では同じエネルギーの電子を利用するという違いこそあれ両者はほぼ同じ情報を与える。しかし、電子とX線との違いから対象とする試料は大きく異なる。透過力の弱い電子を使う(e,2e)法は希薄気体を対象とすることが多いのに対し、透過力に優れたX線を使う(X,eX)法は固体も対象とし得る。一方電子は相互作用が強いため衝突断面積が大きい(〜10^<-21>cm^2)のに対し、X線のそれは数桁小さい。その結果、(X,eX)スペクトルを観測したという報告は未だなされていない。 これを実現するためには多くの課題が残っている。具体的には可能な限り強い単色光を励起光源とすること、散乱X線を有効に集光すること、そしてまた反跳電子のみを識別して効率よく検出することの三点である。そこで本研究では上記を究極の目的とし、効率良いX線集光器および分光器、そして電子アナライザーの開発研究を行った。詳細は研究成果報告書にゆずるが、まずスーパーグラファイト結晶を利用した効率よいX線分光器を製作し、従来のGeを使った分光器に較べて5倍程反射率が高いことを確認した。それを利用して(X,eX)実験を行ったが、反跳電子と光電子とが同時に入射するために目的の信号は得られなかった。そこでそれらを分離するための明るい同心球型電子アナライザーの試作を行い、約2eVの分解能を得た。現在これらを組み合わせて(X,eX)信号の検出を試みつつある。
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