研究課題/領域番号 |
04403006
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大野 惇吉 京都大学, 化学研究所, 教授 (70027077)
|
研究分担者 |
岡村 睦雄 新潟大学, 教養部, 助教授 (30215503)
畑 安雄 京都大学, 化学研究所, 助教授 (10127277)
河合 靖 京都大学, 化学研究所, 助手 (20240830)
|
キーワード | 立体化学 / 反応機構 / カルボニル基 / スルフィニル基 / 基底状態 / 遷移状態 / 酸化還元 / 酵素の化学進化 |
研究概要 |
基底状態における存在比がそのまゝ遷移状態での配座比に移行し、さらにそれが生成物におけるK/S比として表われる反応系を有機化学の中に見出した。この事は、酵素が関与する生体反応においても、酵素による特別な立体規制は必ずしも必要ではなく、反応に供与される基質によって、立体化学は決定されている事を示す興味深い結果である。酵素の化学進化を考える上で参考になる。 この反応系は、カルボニル酸素の向きが反応の立体化学を支配している。その現象が一般的であるかどうかを検討する必要がある。そこで、キラリティーのないH^-を有するキラルなカルボニル化合物MeMPBA^+([★]_★^<★★>=268^★:for R-iso-mer)を合成し、この化合物の還元反応における立体選択性を調べた。その結果、この系においても、還元剤の反応性によって立体選択性が変化していることをが判明した。 さらに、この現象を「官能基双極子の配向による立体規制」という概念に拡張する目的で、MePTTO^+([★]_★^<★★>=★★^★:絶対配置、未知)を合成し、スルフィニル基を利用した立体選択的反応を試みた。ここでも、反応性の異なる還元剤を選ぶことによって、立体選択性を逆転させ得ることがわかる。 以上の結果は、「置換基の双極子の方向が化学反応の起こる面を規定する」という全く新しい概念を有機化学に導入するものであり、有機立体化学論において長年用いられてきた「置換基のかさ高さが反応面を規定する」という概念に、新局面を加えるものである。 なお、、各化合物の絶対構造はX線結晶解析法によって決定している。
|