タキサンジデルペノイドの合成研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04403008
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 桑嶋 功 東京工業大学, 理学部, 教授 (50016086)
• 研究分担者: 堀口 良昭 東京工業大学, 理学部, 助手 (80209296)
• キーワード: タキシニン / タキソール / 8員環閉環 / エンド規制 / タキサン骨格

研究概要

本年度は、タキサンの合成研究を行ない、以下の成果を得た。
(1)これまでの研究結果に基づいて、C-ar-タキシニン及びタキソール誘導体の合成について検討した。その結果、2-位水酸基を保護して反応を行なうと望ましくないエキソ環化体が生成するが、2-位水酸基と4-位のメトキシ基を適当なキレーション試剤で固定して反応を行なうと、8員環環化はエンドに規制され、さらに9-位及び10-位の立体化学も望みの方向に制御されて反応が進行することを明らかにし、目的とするC-ar-タキシニン及びC-ar-タキソール誘導体の合成に成功した。
(2)この8員環閉環反応における10-位の立体化学が制御される原因について検討を加え、8員環閉環以前に動力学的に有利な7員環への閉環が起こり、その開環を経て10-位の立体化学の規制につながるようにジエノールエーテル部位の異性化が起こり、熱力学的に安定な3環性エンド-10β体が選択的に得られることを明らかにした。
(3)このタキサン骨格構築法を利用したタクスシンの全合成を目的として、C-環としてシクロヘキセノン部位を含む3環性化合物の合成について検討した。8員環閉反応はこの場合も進行し、対応する3環性エンド-9α,10β体を好収率で与えた。すなわち、本手法を用いれば、C-環が芳香族及び非芳香族系のいずれの場合にも、必要なエンド規制並びに9-位及び10-位の立体化学を制御して閉環が起こり、タキサン骨格を持つ3環性化合物が収率良く得られることが明らかになった。
さらに、C-環エノン部位へのメチル基の導入法についても検討を加えた。

研究成果

• [文献書誌] Y.Karaoka: "¨Lewis Acid Mediated Intramolecular Cyclization of the Dienol Silyl Ether or Enol Silyl Ether and the Acetalfor Medium-Sized Ring Formation¨" Tetrahedron Lett.33. 6979-6982 (1992)
• [文献書誌] T.Furukawa: "¨Synthetic Studies on Taxane Card4n Framework.A Heghly Efficient Eight-Membered Ring Cyclization with Complete Stereocontrol¨" Tetrahedron. 48. 6975-6984 (1992)
• [文献書誌] K.Tanino: "¨Generation of a Lewis Acid Activated Formaldimine and its Reactions with Enol Silyl Ethers.N-Unsubstituted Aminomethylation¨" Journal of Org. Chem.57. 7009-7010 (1992)
• [文献書誌] M.Seto: "¨Synthesis of C-Aromatic TAxinine Derivatives¨" Chem.Lett.133-136 (1993)
• [文献書誌] K.Morihira: "¨The Seven-Membered Ring Intermedeate to Control the Stereochemistryon the Eight-Membered Taxabe B Ring Cyclization¨" Tetrahedron Lerr.34. 345-348 (1993)
• [文献書誌] T.Nakamura: "¨Highly Stereoselective Chelation Controlled Ene Reaction of 2-(Alkylthio)allyl Silyl Ethers¨" Tetrahedron Lett.34. 477-480 (1993)
• [文献書誌] Isao Kuwajima(分担): "“ORGANIC SYNTHESIS IN JAPAN"Past,Present,and Future" Tokyo Kagaku Dozin, 565 (1992)