タキソ-ルの全合成を目指し、A環フラグメントとして、既に開発した光学活性α-ヒドロキシアルデヒドを用い、光学活性体合成について3通りの方法で検討し、以下の成果を得た。 (1)C環フラグメントとして、3-位にアセタール部位を持つシクロヘキセノン誘導体を用い、キレーション制御条件下で反応させることにより、1-及び2-位の立体化学を制御してAC環をアルドール反応で閉環させることにより、B環を構築し、目的の三環性化合物をエンド体として、好収率で得た。さらに、9-位の水酸基を手掛かりとして、C環のシクロヘキセノン部位を7-位で選択的にエノールとし、その酸化により7-位へのβ-側からの立体選択的水酸基の導入に成功し、タキソ-ルの合成前駆体を好収率で得た。 (2)また、C環フラグメントとして、m-メトキシベンズアルデヒドアセタールを用いてAC環を連絡し、同様にアルドール環化によりエンド三環性化合物を好収率で得た。これを用いて、9-位をケト基に変換した後、バーチ還元及び異性化によりC環を共役シクロヘキサジエンに変換し、この酸化により7-位へ立体選択的に水酸基を導入し、タキソ-ルの合成前駆体を得た。これらの合成計画の今後の問題として、8-位へのメチル基の導入とD環の構築であるが、後者については、既に手法が確立されており、前者については、タクスシンの合成に当たって開発したシクロプロパンを経由する方法について検討を加えている。 (3)さらに、7-位水酸基及び8-位メチル基を含む光学活性C環フラグメントを合成し、これとA環フラグメントを反応させて、必要な官能基を予め含んだ光学活性環化前駆体を合成した。この環化について、現在、検討を加えている。
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