本研気はDNAの“かたち"や塩基配列構造の分子認識について有機化学の立場から研究し、その原理の解明に基いて最先端の生体機能分子を開発することを目的とする。既ち、1)DNAを特異的に切断する超分子の合成、ならびに2)DAN塩基配列を認識する人工ハイブリッド蛋白の合成の二つの研究を並列的に行った。 1)については、天然の抗ガン剤NCSの作用機作、とくにチオールによる活性化のメカニズムおよび塩基配列構造の分子認識について大きな成果が得られた。特に、分子認識についてはコンピューターグラフィックスによる力場計算に基づきこれまでとは全く異なる様式の分子認識メカニズムを提唱しアメリカ化学会誌に発表し大きな注目と反響を得た。これらの事実をベースに、DNAを特異的に切断する分子として、我々は“光フェントン試剤"と命名した新しい光DNA切断分子の開発に成功した。この分子は-GG-配列の位置で特異的にDNAを切断する。 2)については、天然DNA認識蛋白のモデル化合物を十数種類合成しDNAとの分子認識機能を調べた。C2キラルなテンプレートに15残基のアミノ酸を結合させたハイブリッド蛋白モデルを化学合成し、DNAとの結合を調べたところ、DNAの6塩基対を認識できることをつきとめた。この分子認識の原理を究明し、この人工ハイブリッド蛋白に光DNA切断分子を連絡することにより、人工制限酵素を構築することを現在検討中である。
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