研究概要 |
本研究ではその構造特性からユニークな物性や生理活性機能が期待できる複素多環系に着目して、これらのうち特に、含窒素および含イオウ複素多環系を中心に分子設計、合成設計を行って、物理性、化学的挙動、生理活性なども明らかにすることによって新規機能性ファインケミカルズ開発の基礎的研究を押し進めることを目的としている。本年度の研究実施計画にそって検討した結果を以下各項目毎に要約した。 1)活性分子種イミノホスホランを用いる分子内aza-Wittig反応による生理活性含窒素複素環化合物合成法の開発として本年度はジヒドロキナゾリン骨格をもつ抗ガン剤Batracylinおよび1,4-ベンゾジアゼピノン骨格をもつ抗ガン活性抗生物質DC-81の合成に成功した。また分子間aza-Wittig反応の活用によるプテリジン骨格合成についても可能性を見いだしている。 2)多環系ニトロンの1,3-双極性環化付加反応による多環系複素環合成法の研究の発展としてこれらのニトロンがニトリル基と反応しΔ^4-1,2,4-オキサジアゾリン骨格合成が可能であることを見いだした。そこでその他の種々のニトロンとの反応についても超高圧反応条件下も用いて反応性と合成への応用を検討している。高歪4員環化合物スクアリン酸の合成素子としての応用としてルイス酸触媒によるアリルシラン類の付加反応とその開環-閉環反応を活用したγ-ブテノリド誘導体の合成にも成功した。 3)ヌクレオシド誘導体の合成設計の一環としてエポキシドのアジドアニオンによる選択的開環反応と選択的脱離反応によりビニルアジド構造をもつチミンおよびウラシル修飾ヌクレオシドの合成に成功した。 4)含フッ素合成素子の開発の一環としてシリルエノールエーテルと含ハロゲンオレフィンとの付加反応-環元的脱塩素反応によりγ,γ-ジフルオロアリルカルボニル化合物の一般合成に成功した。また親双極子、親子ジエンとして反応性が期待できる1-フェニル-3,3,3-トリフルオロプロペンの簡便合成にも成功した。これらの含フッ素複素環合成への応用についても検討を進めている。 5)合成した複素環化合物の生理活性・薬理活性については依頼検討を進めている。
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