研究概要 |
本研究では、均一系触媒反応としてヒドロホルミル化と分子内ヒドロシリル化を選び、基質のエナンチオ選択性をキラルな補助配位子の構造に付与した錯体触媒を予測設計し、かつ実用化することを目的としている。 ジホスフィン(2R,5R)-diendo2,5-bis{(diphenylphosphino)methyl}bicyclo[2.2.1[hepttane(1)およびdiendo-(2R,5R)-bicyclo[2.2.1]heptandiylbis(diphenylphosphinite)(2)、およびラセミ体を合成した。これらは(P-P)Fe(CO)_3、(P-P)RhH(CO)_2錯体のCAChe分子力場計算による予側で、標準結合角(natural bite angle)が123°および118°を有することが分った。一方、正方平面錯体[Rh(cod)dl-(1)^+BF_4^-を調製すると、二量体も競争的に生ずることも分った。しかし、この単核カチオン錯体が単離できることは、キレートのbite angleが最小100°程度で可能であることを意味する。すなわち1(および2)は比較的広い結合角の許容度があることが分った。従って、触媒反応サイクルを設計する上で、広いnatural bite angleの二座配位子を含む錯体触媒の有利性があるとする作業仮説は、ひとまず成功であったと考えている。事実、Rh(CO)_2(acac)とジホスフィンdl-(1),dl-(2),dppe,dppb,dpph 【chemical formula】 (bisdiphenylphosphino-ethane,-butane,-heptaneの略)を触媒前駆体とするスチレンのビドロホルミル化(式1)において、触媒活性を示すturnover rateは2>1>dppe>dppb>>dpphの順であり、明らかに新規に設計合成したジホスフィンの有効性を示している。次年度以降不斉選択性の発現のために改善を進める。 平成4年度に導入した超電導FT-NMR日本電子(株)JNM-EX270は順調に稼働しており、構造解析に絶大な威力を発揮している。
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