研究概要 |
われわれは有機金属化合物を触媒あるいは反応剤として用いることによって、反応性制御という有機合成の方法論の中心課題に取り組んでいる。そのためには、反応の中間に生成してくる反応活性種(又は触媒活性種)の性格を理解することが肝要である。本研究報告は、このような観点に立つ研究課題の下に、オレフィンのヒドロホルミル化反応、2,7-オクタジエニル系のアリル化-環化反応およびα,β-不飽和ケトンへの共役付加反応における官能基、位置、および立体選択性に及ぼす各種配位子の効果を総合的に研究した。すなわち、 1.ロジウム(I)錯体の新規補助配位子の開発とヒドロホルミル化における選択性- 広いバイトアングル(120°)を有するキラルなキレート型配位子(L-L)によって [RhH(CO)_2L-L]はビニルアレーン類のヒドロホルミル化に高い触媒活性を示したが、不斉選択性は低かった。 2.パラジウム(0)錯体を触媒とするアリル化の位置および立体選択性 (1)アリルアンモニウム塩のパラジウム(0)錯体への酸化的付加と不斉移転反応 (2)Pd(0)触媒によるπ-アリルパラジウム中間体での不斉移転-環化反応 (3)π-アリルパラジウム中間体の分子内アルケン挿入-環化反応- Pd(0)触媒による酢酸2,7-オクタジエニル系のアリル化は、溶媒に酢酸を用いる限りにおいて、新規な5員環形成反応となった。さらに、1,3-不斉移転を伴うこの環化反応でプロスタグランジン中間体を合成した。 3.官能基化された有機混合亜鉛アート錯体の共役付加反応とその合成的応用 (1)有機混合亜鉛アート錯体の構造と共役付加反応 (2)(Z)-ビニルジメチル亜鉛リチウム錯体を用いるプロスタグランジンの合成- 特定の(Z)-ビニル亜鉛アート錯体の4-アルコキシ-2-シクロペンテノンへのジアステレオ面選択的付加反応と、活性ハロゲン化アルキルによるエノラート捕捉によって、プロスタグランジン合成を行った。
|