研究分担者 |
加藤 茂 東京農業大学, 農学部, 助教授 (90147489)
牛久保 明邦 東京農業大学, 農学部, 助教授 (60078219)
吉羽 雅昭 東京農業大学, 農学部, 助教授 (20078190)
大澤 貫寿 東京農業大学, 農学部, 教授 (90078189)
武長 宏 東京農業大学, 農学部, 教授 (80078154)
|
研究概要 |
農業生態系へ農業以外から持ち込まれる各種有害化合物の影響を如何にして排除するかについての研究が緊急課題とされている。また、農業生態系そのものから発生する各種汚染物質特に地球環境温暖化効果ガス及び硝酸イオンや農薬等による地下水等への汚染物質の動態を的確に把握し、それを排除する方法を早急に確立することが望まれている。研究初年度として、各種同位体比分析(^<15>N,^<34>S,^<18>O)技術の確立と技術習得に重点をおいた。研究第2年度として、調査地の設定と農作物(米,麦など)の収集、地下水の連続的サンプリングとそのイオン組成分析、水稲栽培時に生成するメタンガスの生成機構、酸性雨とその輸送過程について検討した。研究最終年度として、更に詳細な調査・分析・検討を実施した。次に結果の概要を記す。(1)地下水中の硝酸イオンは、季節によりその濃度変動が認められ化学肥料・堆厩肥の施肥量及び生活排水に由来することが明らかとなった。窒素同位体の^<15>N分析のδ^<15>N値から、堆厩肥・生活排水及び脱窒らよると推定される観測地点がこの値が大きく、化学肥料施用地では中間値を示した。この結果から、この地域の施肥とその施用量について新たな施用基準を設定しその運用を行うことが望まれる。(2)水田土壌中からのメタン生成について、阻害剤である鉄と肥料形態を変えた培養区に炭素源として酢酸及び水稲根粉砕物を添加しその生成量について定量的な検討を実施した。その結果、鉄+硫酸アンモニア区がメタン生成の抑制効果が最大であった。(3)特に米を中心としての農産物中の^<15>N,^<13>C同位体組成と環境汚染物質の発生と関連の深い栽培条件、とくに施用する有機物や肥料の種類等々の関連を明らかにするために各地農業試験場と協力し収集し、分析をさらに進めている。(4)日本の酸性雨と中国の酸性雨の原因物質明らかにするために両地域の雨を採取しその組成分析を行い、硫酸イオンが他のアニオン類に比較し高濃度で含まれていることがすべての調査地点で認められた。また、林内と林外の雨水を採取しイオン組成を比較すると、林内の雨水にはSO_4^<2->,NO_3^-濃度が極端に高いことが明らかになった。これは樹木の樹冠が酸性原因物質を高負荷でとらえていることが示唆される。(5)大気から地表への多環芳香族炭化水素の降下量は地域差が非常に大きく、発生源からの距離が離れると共に急減(40kmで25%に減少)した。植物による多環芳香族炭化水素のトラップとその降雨による洗い流しによる林内での多環芳香族炭化水素の降下量の増加が認められた。本研究で実施した精密同位体比分析は、環境汚染源物質の追跡には有力な分析方法であることが明らかにされた。
|