大環状ポリアシンによるインテリジェント・ロボット分子の創造

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04403024
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 木村 栄一 広島大学, 医学部, 教授 (30034010)
• 研究分担者: 塩谷 光彦 広島大学, 医学部, 講師 (60187333) ; 小池 透 広島大学, 医学部, 助教授 (90186586)
• キーワード: 大環状ポリアミン / インテリジェント分子 / 人工酵素 / 炭酸脱水酵素 / アルコール脱水酵素 / DNA高次構造変換 / 金メッキ剤 / 抗エイズ薬

研究概要

新規の大環状ポリアミンおよびそれらの金属錯体を合成し、以下のようなインテリジェント機能を発見、開発し、酵素反応の機構解明、人工酵素の開発、新機能性分子のデザインおよび新医薬品の開発に多大の成果をあげた。
1.12員環大環状トリアミン亜鉛錯体と芳香族スルホンアミドとの極めて強い親和性を見い出し、スルホンアミドの炭酸脱水酵素(活性中心に亜鉛を含む)の阻害作用の化学的証明に世界で初めて成功した。
2.12員環大環状トリアミン亜鉛錯体のアルコール脱水酵素様活性を発見した。これは、世界で初めて成功したアルコール脱水酵素モデル例である。本研究により、活性中心亜鉛の意義が明らかとなり、新たな触媒開発が可能となった。
3.12員環大環状テトラアミン亜鉛錯体が1:1組成でDNAの高次構造変換(右巻き→左巻き)機能を有すること、及び核塩基のうち、チミジン(RNAの場合は、ウラシル)のみを選択的に認識すること発見した。
4.ルテニウム-トリスピリジル錯体(光増感基)とニッケル-サイクラム錯体(電子受容体)の両方の機能錯体からなる超分子を合成した。光エネルギーによる二酸化炭素の高効率かつ高選択的な還元触媒となることを見い出した。
5.14員環大環状テトラアミン金錯体が無公害、リサイクル金メッキ剤として、従来の金シアン錯体以上に優れていることを発見した。
6.一連の大環状ポリアミン及びその金属錯体が、強い抗HIV-ヴィールス活性をもつことを発見した。その機構を明らかにしつつある。新たな抗エイズ薬開発の途を開いた。

研究成果

• [文献書誌] E.Kimura,H.Kurosaki,Y.Koike,and K.Toriumi: "X-Ray Structural Study of Zinc(II)Inclusion Complex of a Phenolate-Pendant Cyclam." J.Inclusion Phenomena. 12. 377-387 (1992)
• [文献書誌] E.Kimura: "Macrocyclic Polyamines with Intelligent Functions." Tetrahedron. 48. 6175-6217 (1992)
• [文献書誌] E.Kimura,B.Xianhe,M.Shionoya,S.Wada,and S.Maruyama: "New Nickel(II)Cyclam(Cyclam=1,4,8,11-Tetraazacyclotetradecane)Complex Covalently Attached to Ru(phen)^<2+>_3(phen=1,10-Phenanthroline).A New Candidate for the Catalvtic Photoreduction of Carbon Dioxide." Inorg.Chem.31. 4542-4546 (1992)
• [文献書誌] E.Kimura.H.Kurosaki,Y.Kurogi,M.Shionoya,and M.Shiro: "pH-Dependent Coordination Mode of New Bleomycin Synthetic Analogues with Copper(II),Iron(II),and Zinc(II)." Inorg.Crem.31. 4314-4321 (1992)
• [文献書誌] T.Koike,E.Kimura,I.Nakamura,Y.Hashimoto and M.Shiro: "The First Anionic Sulfonamide-Binding Zinc(II)Complexes with a Macrocyclic Triamine;Chemical Verfication of the Sulfonamide Inhibition of Carbonic Anhydrase." J.AM.Chem.Soc.114. 7338-7345 (1992)
• [文献書誌] E.Kimura,M.Shionoya,A.Hoshino,T.Ikeda,and Y.Yamada: "A Model for Catalytically Active Zinc(II)Ion in Liver Alcohol Dehydrogenase:A Novel¨Hydride Transfer¨^1 Reaction Catalyzed by Zinc(II)-Macrocyclic Polyamine Complexes" J.Am.Chem.Soc.114. 10134-10137 (1992)