研究概要 |
平成4〜5年度に合成した大環状ポリアミンおよびそれらの新規誘導体を用いて,以下のようなインテリジェント機能を発見,開発し,酵素反応の化学的機構解明,人工酵素の開発,新規機能性分子および新医薬品の開発に多大の成果をあげた。 (1)核酸塩基であるチミジンやウラシルの選択的な認識能を持つ大環状テトラアミン亜鉛錯体を用い,ポリ-Uをメッセンジャーとする蛋白合成を阻害することを見いだした。 (2)キシリル基で架橋した大環状テトラアミン誘導体の亜鉛錯体が強い抗エイズウイルス活性と高い安全性を有することを発見した。 (3)クリプタンド骨格を持つオクタアミンの亜鉛二核錯体が燐酸モノエステルと選択的に反応し,リン酸エステル結合を切断することを見いだした。 (4)電子プール機能を持つペンダントを有する新規大環状テトラアミン金属錯体の合成に成功し,それらが核酸塩基やイミド誘導体を特異的に認識することを見い出した。それらは,酸化還元能を持つホスト分子が利用した新しい核酸塩基の定量定性システムの可能性を示した。 (5)新規アルコール性水酸基を持つ大環状テトラアミン亜鉛錯体を合成した。その錯体は生理条件下で容易にアルコラート錯体を形成し、強い求核剤としてリン酸エステルを分解することが明かとなった。本研究を発展させれば低分子人工フォスファターゼの開発が可能となる。
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