シナプス前・後膜の代謝型グルタミン酸受容器応答-そのシグナル伝達路におけるクロストーク-

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04404023
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 赤池 紀生 東北大学, 医学部, 教授 (30040182)
• 研究分担者: 鍋倉 淳一 東北大学, 医学部, 助手 (50237583) ; 河 和善 東北大学, 医学部, 助教授 (70125839)
• キーワード: 代謝型グルタミン酸受容器 / 興奮性アミノ酸 / 海馬 / 電気生理 / パッチクランプ法 / K^+電流 / 急性単離神経細胞 / 中枢神経

研究概要

本年度の研究目標は計画通り達成された。以下に概要を示す。代謝型グルタミン酸受容器(mGluR)の賦活により活性化並びに不活性化の遅い外向き電流(mGlu応答)が惹起された。その逆転電位はK^+の平衡電位に一致し、細胞外K^+濃度の10倍変化に対し59.5mVシフトした。キスカル酸(QA)およびグルタミン酸(Glu)の惹起するmGlu応答のEC_<50>値はイオンチャネル型Glu受容器応答のそれより約100倍低濃度であった。また、Glu、QA、tACPDの惹起する最大応答は等しく、細胞外Ca^<2+>を除去してもmGlu応答は消失しないが、細胞内をCa^<2+>キレーターを含む液で潅流するか、アセチルコリン、カフェインやライアノジンにより細胞内Ca_<2+>ストアからCa_<2+>を枯渇させると消失した。さらに、GDPβS(G蛋白阻害剤)、ネオマイシン(フォスフォリパーゼC阻害剤)とヘパリン(IPa受容器拮抗薬)がmGlu応答を仰制したが、スタウロスポリン(Cキナーゼ阻害剤)、百日咳毒素(ある種のG蛋白阻害剤)、アパミン(smallコンダクタンスのCa_<2+>依存性K_+チャネル阻害剤)とイベリアトキシン(largeコンダクタンスのCa^<2+>依存性K_+チャネル阻害剤)はmGlu応答に影響しなかった。このmGlu応答は従来mGluR拮抗薬と報告されていたAP3およびAP4により拮抗されなかった。以上よりCA1領域のmGluRはAP3およびAP4に非感受性であり、百日咳毒素非感受性G蛋白質→フォスフォリパーゼC→IP_3→IP_3感受性Ca^<2+>ストア→Ca^<2+>感受性Ca^<2+>ストア→さらなるCa^<2+>遊離なる経路を経てintermediateクラスのCa^<2+>依存性K^+チャンネルが活性化されることが判明した。用量反応関係、百日咳毒素感受性、AP3感受性を従来の報告と比較し、in situ hybridizationの報告とも考え併せると、本研究で得られたmGlu応答はmGluR5サブタイプを介すると示唆された。この応答はLTPには直接関与せず、神経興奮の閾値付近で膜電位を微妙に制御するモジュレーター的役割が考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Ueno,S.,Ishibashi,H.& Akaike,N.: "Perforated-patch method reveals extracellular ATP-induced K^+ conductance in dissociated rat nucleus solitarii neurons." Brain Res.597. 176-179 (1992)
• [文献書誌] Wakamori,M.,Hidaka,H.& Akaide,N.: "Hyperpolarizing muscarinic responses of reshly dissociated rat hippocampal cal neurones" J.of physiology. (1993)
• [文献書誌] Ye,J.H.& Akaide,N.: "Calcium currents in pyramidal neurons acutely dissociated from the rat frontal cortex:a study by the nystatin perforated patch technique" Brain Res.(1993)
• [文献書誌] Furudawa,K.,Onodera,H.,Kogure,& Akaide,N.: "Time-dependent expression of Na and Ca channels in PC12 cells by nerve growth factor and cAMP" Neuroscience Res.(1993)
• [文献書誌] Uneyama,H.,Harata,N & Akaide,N.: "Caffein and related compounds block inhibitory amino acid-gated C1-currents in freshly dissociated rat hippocampal neurones" British J.of Pharmacology.