研究課題/領域番号 |
04404026
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研究種目 |
一般研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
医化学一般
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研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
早石 修 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (40025507)
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研究分担者 |
大坂 寿雅 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究九部, 研究員 (30152101)
渡部 紀久子 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (90211672)
松村 人志 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究副部長 (50173886)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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キーワード | プロスタグランジンD_2 / プロスタグランジンE_2 / 睡眠 / 覚醒 / プロスタグランジンD合成酵素 / クモ膜下腔 / β-トレース / 脳脊髄液 |
研究概要 |
脳内に投与されたPGD_2が睡眠を促進し、PGE_2が覚醒を引き起こすことをわれわれは繰り返し示してきた。本申請研究は、このようなプロスタグランジン(PG)による睡眠・覚醒調節の実行系として、どのような神経回路網が存在するのかを解明すべく企画された。ところが本研究の過程で、当初の予想とは異なった結果が次々と得られ、本研究は意外な展開をみせた。脳内でPGD_2を合成する酵素、すなわちPGD合成酵素の脳内分布について、in situ hybridizationや免疫組織化学の手法により検討したところ、PGD合成酵素は脳脊髄液を産生している脈絡叢や、脳の表面を覆っているクモ膜、軟膜に豊富に存在していることが明らかになった。さらには、以前から脳脊髄液中でアルブミンに次いで多いタンパク質として知られてきたβ-トレースが実はPGD合成酵素そのものであることが国外の研究グループとの共同研究で確認された。これらの一連の研究と並行して、PGD_2の睡眠促進に関する作用部位についても、脳内持続微量注入法やマイクロダイアリシスの手法を用いて検討してきた。その結果は、いわゆる睡眠中枢とされている視束前野ではなく、より吻側の脳底領域にその作用部位が存在することを示していた。すなわち、当該部位のクモ膜下腔へPGD_2を持続注入すると、生理的に生じ得る最大レベルの睡眠増加が得られたのである。以上の諸結果は、今日まで一般に考えられてきたシナプスを介したシグナルの伝達からなる機構以外に、脳表におけるなんらかの生理機能の調節機構といったものが存在し、睡眠・覚醒の調節に関与している可能性を示唆するものである。さらに脳脊髄液の役割についても、今後注目していく必要があることを示唆している。本研究の成果は、睡眠・覚醒調節機構のみならず、神経科学全般の研究の今後の発展に、新しい局面を開くものと考えている。
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