研究概要 |
ミトンコンドリアは細胞における酸素代謝の主要な場である。呼吸に伴って発生する活性酸素ラジカルが、mtDNA自身の損傷を引き起こしうる。活性酸素ラジカルによるmtDNAの損傷とこれに伴う変異蓄積の、ミトンコンドリア病および加齢に伴う病変への関与を検証した。多数例についてmtDNAの全塩基配列を解析した結果、mRNA遺伝子における種間保存されているアミノ酸の置換を伴う塩基置換(mit^-)に加えて、tRNA・rRNA遺伝子における種間保存されている部位を塩基置換(syn^-)を複合して有する患者の死亡年齢令が、mit-変異のみ、あるいはsyn-変異のみを有する患者の死亡年齢より有為に低いことを見いだした(Lancet345:189,1995)。ヒト剖検心筋において欠失mtDNAと8-OH-dGの両者が加齢と共に蓄積し、指数関数的に増加することを示した(BBRC189:979-85,1992)。180組のプライマーを用いてmtDNA欠失を網羅的に検出する系を用いて、mit^-変異とsyn^-変異を伴った心筋症の19歳の患者で欠失mtDNAが高齢者において検出される量に匹敵する量に達していることを明らかにした(BBRC202:102-110,1995)7歳で心臓移植を受けた患者において3種の生殖細胞変異に加えて、212種の欠失mtDNAを体細胞変異として検出し、表現型とmtDNA遺伝子型の間の関連を明確にした(BBRC207:613-620,1995)。高酸素下で誘発される細胞死に欠失mtDNAの増加が伴うことを示した(BBRC in press)。母系遺伝によって伝えられたmtDNA変異(mit^-およびsyn^-変異)が複合し、さらに後天的にmtDNAに蓄積する点変異および欠失がこちれに加わり、活性酸素ラジカルによるmtDNAの損傷を加速していることが明らかにした。
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