研究概要 |
肝をはじめとする消化器臓器の虚血性機能不全の病態および癌の肝転移過程における活性酸素の関与を生体内で直接証明することは、臓器移植後の機能不全や悪性腫瘍の転移processを解明する上で重要である。本年度は活性酸素源の細胞と障害を受ける細胞を共焦点レーザー顕微鏡にて同定するため、その確立と肝微小循環障害時の活性酸素生体分布に関する基礎的解析を行なった。(1)虚血性肝障害における活性酸素生成の時間的空間的解析をラット分離潅流肝を用い行なった。過酸化脂質感受性螢光プローブDCFH,ミトコンドリア内膜電位感受性螢光プローブRh123を負荷し、low-flow hypoxiaにより終末肝静脈域(zone3)と門脈域(zone1)の中間帯より酸素ストレスが始まり、ミトコンドリア機能低下と細胞死はそれに遅れてzone3に出現し小葉分布内heterogeneityがみられた。(2)肝細胞,癌細胞にDCFH,Rh123および核酸指向性プローブで細胞死の指標となるPIを負荷し,Kupffer細胞または白血球と混合培養すると酸素ストレスの発生後細胞死が生ずるが,ミトコンドリア機能低下や細胞死はSODで抑制されず,酸素ストレスが直接細胞死につながらない可能性も示唆された。(3)癌細胞の肝転移のin vivo観察のためDCFH,Rh123を負荷した癌細胞をラット門脈より注入すると,癌細胞はzone1に主に取り込まれ、同部のKupffer細胞に貧食された後、代謝変化をきたすことが証明できた。(4)肝移植の実験として、摘出ラット肝に一定時間cold stressを加えた後,別のラットに移植する手技を確立し,肝類洞内白血球動態と類洞血流変化を生体顕微鏡下に観察することに成功した。以上の検討により,共焦点レーザーシステムによる生体顕微鏡観察に必要な基礎的成績をえることができた。
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