研究概要 |
共焦点レーザー顕微鏡システムを用い平成4年〜5年度にかけて以下の成果を上げた。1,倒立型共焦点レーザー顕微鏡システムにより過酸化脂質感受性蛍光プローブdichlorofluorescin、ミトコンドリア内膜電位感受性蛍光色素rhodamine123、核酸指向性蛍光色素propidium iodideを用いた生体観察のシステムを確立した。2,腸間膜微小循環系を用い、虚血一再潅流時に細静脈領域に特異的に白血球-内皮相互反応をはじめ活性酸素ストレスやミトコンドリア機能障害が惹起されることを明らかとした。3,ラット分離潅流肝を作成し、low-flow hypoxiaにした際、終末肝静脈域と終末門脈域の中間帯よりoxidative stressが始まり、肝静脈域へ広がる。細胞死はそれに遅れて出現し、同様の局在を示し、活性酸素除去剤はこれらを抑制した。ミトコンドリア機能低下は特に肝静脈域に強く観察された。Low-flow hypoxiaにより活性酸素を介する肝細胞障害が肝小葉の中間帯に出現することが証明された。4,潅流肝を用いcold ischemiaの際の肝実質細胞の代謝変化をモニターした。虚血後白血球を加えて再潅流すると類洞内皮-白血球相互反応と続く実質細胞障害が惹起され、活性酸素除去剤は障害を抑制した。移植後に発生する再潅流障害に白血球-類洞内皮相互反応ならびに活性酸素が重要な役割を担うことが明らかとなった。5,腫瘍細胞とKupffer細胞を共培養し、in vitroにおける腫瘍細胞内代謝変化を観察した。Kupffer細胞との共培養により肝癌細胞および大腸癌細胞にはoxidative stressが生じ、その後ミトコンドリア機能障害、細胞死に至ることが明らかとなったが、活性酸素除去剤では細胞障害は完全には抑制されず、nitric oxide(NO)の合成阻害剤により抑制されたことからNOの関与が重要であることが判明した。6,腫瘍細胞を潅流肝に注入することによりex vivoの系で検討を行い、生体肝類洞においてもoxidative stressならびにNOを介した腫瘍細胞障害が惹起されることを明らかとした。
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