研究概要 |
本研究では心筋小胞体Caシグナリング蛋白質の調節機構のおよびその生物学的意義を明らかにするのを目的とした。 単離心筋細胞において甲状腺ホルモンによりホスホランバンmRNAは低下し、カルシウムポンプmRNAは時間とともに増加した。カルシウム取り込みは、最大活性の増加、親和性の増加を認めた。従ってホスホランバンによるカルシウムポンプ活性調節は遺伝子発現を介する新しいメカニズムが存在することがあきらかになった。 ホスホランバンあるいはCaAtpase cDNAに部位特異的変異を導入し、両分子をCOS-1細胞に導入し発現させることにより、作用部位を検討した。まずホルホランバンその細胞質1A ドメインに存在する正電荷アミノ酸のLye3,Arg9,Arp13、Arg14 そして負電荷のClu2、中性のVal4、Leu7,Alall,Ile12,疎水性塩基のVal4,Leu7,Alall、Ilel2、Alal5、Ile18、そしてリン酸化部位であるSer16、Thr17にアミノ酸変異を導入するとホスホランバンのCaATPase活性阻害効果が失われた。従って相互作用部位はその細胞質ドメインIAに存在する。 CaATPaseに変異を導入したところLys397-Val402のみが両蛋白質のの相互作用に影響を与えた。従ってこの領域がホスホランバンの細胞質ドメイン1Aと相互作用しATPase活性を調節していることが明らかになった。 悪性高熱症の遺伝学的研究によりCa遊離チャネル遺伝子の単塩基変異(C1843T)が原因であることが示唆されているのでその変異を導入することによりその機能に与える影響を検討した。変異体発現細胞はカフェイン、ハロセンなどに高感受性を示した。従ってこの変異が悪性高熱症の原因であることが証明された。さらにこの変異がCa遊離チャネルのモジュレーター感受性に重要な変化を与えるのでこの変異Arg615Cysが活性調節に重要な役割を果たしている部位に相当することが明らかになった。
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